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コラム


医療と暮らし −病院リレーコラム

震災と慢性硬膜下血腫

2012/2/2の紙面より


症例:81歳 男性 診断名:慢性硬膜下血腫 脳よりやや白っぽく三日月状の血腫を認める。正中構造が左から右に大きくゆがんでいる

手術後3週間のCT画像。血腫は若干残るが、ゆがみは改善した
 私は神戸で阪神大震災を経験しました。1995年1月17日のことです。それから1カ月ほどして、急に「慢性硬膜下血腫」の患者さんが増えてきたことに気付きました。症状は頭痛や手足のまひ、なんとなくぼんやりしている、認知症状が出たなどです。「たんすがゴン」や「揺れでこけて頭を打った」などと覚えている方もありますが、半数は記憶にないなど原因不明でした。

 硬膜とは頭蓋骨のすぐ内側にある硬い膜で、脳脊髄液を含むくも膜とともに脳を包んでいます。硬膜の下(内側)に出血して血の塊ができる病気が「慢性硬膜下血腫」です。静脈が切れるのでゆっくりと血がたまり、症状が出るまで時間がかかります。

 成人の場合、高齢の男性、特にアルコール常飲者に多いのが特徴ですが、「血液サラサラ」の薬を内服されている方も要注意です。この季節、雪で滑って頭を打ったなどの体験があれば、ご本人のみならず、ご家族も注意して見守る必要があります。しかし東日本大震災後、急に増えたという報道や報告がないのが気掛かりです。

 頭部CTを撮れば、専門の医師なら診断はつきます。この病気を知っていて、まず検査をすることが大切です。治療は、局所麻酔で頭蓋骨に小さな穴を開け、血液を洗い流す方法が一般的です。8〜20%の確率で術後に再発しますが、何回も繰り返す例はまれです。「治療可能な認知症」としてこの病気があることを知っていて損はありません。ひょっとして、と思われましたらご相談下さい。

 (公立八鹿病院副院長・脳神経外科 福森豊和)



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