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コラム

海潮音

2月8日

 豊臣秀吉が大阪城を築く際、徴発された但馬牛はその働きが認められ、大阪奉行から「一日武士」の身分を与えられた。「登り牛」として、但馬牛の名を天下に知らしめたのは、この頃からだといわれる◆役牛だった但馬牛が食用として注目され始めたのは、幕末期の神戸港開港が契機になったとの説がある。牛肉を食べる習慣がなかった時代。但馬牛を食べた外国人によって評判になり、神戸のおいしい牛肉が「神戸ビーフ」と呼ばれるようになったという◆現在、但馬牛の中で特に上質なもの、1年間に加工される但馬牛約6千頭のうち、約半数が神戸ビーフとして認定されている。この兵庫県産の高級和牛ブランドがこのほど、初めて海外に輸出された。行き先は多くの観光客が訪れるマカオだ◆海外における“和牛の代名詞”が、これまで海を渡っていなかったのは意外と言えば意外。まがい物なども出回る中、本物を知ってもらうことでブランドを保護、強化して、海外での消費拡大を狙っている◆国内市場の落ち込みや環太平洋連携協定(TPP)の動きをにらんで、アジア市場を中心に海外に打って出る攻めの姿勢がどこまで通用するか。名実ともに、世界の神戸ビーフとなるための試金石となる。


2月7日

 「二十四の瞳」の名場面が生き生きと−。米子鬼太郎空港ロビーで、安部朱美さんの創作人形展を堪能した。岬の分教場の女先生と着物姿の12人の1年生が浜辺で一緒に歌う場面で、安部さんの新作という◆それぞれの人形のしぐさや顔に表情があり、正面、横、後ろとさまざまな角度から見て楽しめる。近くに居た人が「素晴らしい」と思わずつぶやいた。人形たちの魅力が合わさって、四方八方に輝きを放っている◆二十数年ぶりに壺井栄さんの原作本を読んでみた。女学校出たての女先生を慕う、キラキラとした子どもたちの瞳。戦争を経て、ある者たちは死に、生き残った者たちもそれぞれに苦労を重ねる。約20年にわたる物語だ◆戦争で失明した磯吉が同窓会で、1年生時代にみんなで撮った写真を手に「見えるんじゃ、これが先生じゃろ。その前に…」と語る場面が象徴的だ。わがことのように一人一人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ慈愛にあふれた作品だった◆財政難、少子高齢化、格差拡大の進む日本。国力回復の号令の下に、個々が見えなくなってはならない。安部さんは原作を読み、映画のDVDを何度も見て、それぞれの性格を思いながら制作したという。それが会場で感じた輝きの源だ。


2月6日

 1週間前の大阪国際女子マラソンを見て、思わず「バンザイ!」と叫んだ。重友梨佐選手(24)が初優勝。五輪代表を確実にした◆マラソンはまだ2度目。2時間23分23秒は国内歴代9位。久々に胸のすく高速レースだった。本命視された長距離界の女王、福士加代子選手を一騎打ちのすえ引き離し、独走態勢で圧勝。まさに期待の新星の登場である◆「重友って?」と思った人もいるかもしれないが、駅伝の名門、岡山・興譲館高3年だった2005年、主将として全国高校駅伝初優勝に貢献。卒業後に天満屋に入社し、全日本実業団駅伝では一昨年、昨年と2年連続区間賞の実績を持つ◆もう少し言わせてもらえば、毎年日本海駅伝と同時開催の「くらよし女子駅伝」に3年連続出場。04、05年に連続優勝した。伯耆路から都大路へ。同年暮れの全国高校駅伝で初優勝。新谷仁美選手(07年東京マラソン優勝)らと興譲館黄金時代を築き上げた◆2週間前の都道府県対抗男子駅伝で、兵庫優勝のゴールテープを切った竹沢健介選手も報徳学園高時代、「日本海」に3年連続出場している。ほかにも数えるとキリがないほど、多くの名ランナーが鳥取県からはばたいてきた。地元駅伝ファンとしては、これが鼻高々なのだ。


2月5日

 日本海側を中心に大陸を見た「逆さ地図」を開いてみたら、あらためて山陰が対岸に近いことを実感する。地図は富山が基点になっているが、先の中海市長会で「この地域からみた地図を作ってみては」といった提案があった◆今年は古事記編さん1300年だが、韓国にも同じような神話がある。かつて大陸との交流が盛んで、早くから文化も伝来したこの地域は日本の表側として栄えた。古事記1300年は、そのことを内外にアピールするまたとない機会である◆中海圏域の4市に新たに出雲市が加わる。さらに鳥取県西部町村会もオブザーバー参加し、「中海・宍道湖・大山圏域市長会」。長ったらしいので、松江市側から神話にちなんで「国引き市長会」の提案があった◆「国引き神話」は島根県だけでなく、鳥取県側にもまたがる。この圏域にふさわしい壮大なロマンだが、ともすると「島根のイメージが…」との向きも。雲州と伯州を合わせて「雲伯市長会はどうか」と野坂米子市長。ちなみに中海市長会のイメージキャラクターは「ウンパくん」である◆いっそのこと、名称を住民から広く募ってみては。圏域の住民の一体感や連帯感の醸成には案外それが一番と思うが、いかがだろうか。


2月4日

 降り続く雪、雪…。通勤や通学など日常生活への支障は大きく、外で遊べなくて、家に閉じ込められていた小さな子も多かったろう◆この雪、手元の辞書によると、本字は雨かんむりに彗を書いて「」。彗には小さい、軽いの意味があり、雪片が雨のように空から降る様子を表現したものか。風に吹かれふわふわと舞う真っ白な雪。実際には不都合なことが多いはずなのに、雪には人の心をとらえる不思議な魅力がある◆六花、天花、風花、青女、白魔−。全て雪の異称で、六花は六角形の結晶の形から。天花は天上界に咲く花を、風花は晴れた日に風に乗って舞う雪を指す。各地に大きな被害をもたらした今回の豪雪は、悪魔に見立てた白魔の表現がぴったりだ◆異称に限らず、雪にはわずかな違いでいくつもの呼び名がある。粉雪や綿雪、玉雪、べた雪など。その詳細さは日本人の感性の細やかさを示すとともに、良くも悪くも、雪がわれわれの生活のごく身近にある証しでもあろう◆暦の上ではきょうから春。猛威を振るった雪も、ようやくピークを越えたが、油断は禁物。来週には再び寒気が訪れるという。雪とけて村いっぱいの子どもかな(小林一茶)。本格的な春の訪れまで、もうしばらくの辛抱だ。


2月3日

 鳥取市など鳥取県東部で積雪60センチを超える久方ぶりの大雪となった。昨年正月の県西部の記録的な豪雪が頭をよぎる。車が千台以上立ち往生した中西部の国道9号。その後、並行して山陰道の東伯中山道路が開通した。東西を結ぶ2本の大動脈は心強い◆しかし、県東部の山陰道・鳥取〜青谷間の全通はまだ見通しがつかない。山間部の道はあるが、実質国道9号に頼らざるを得ず、きのうの昼間も、鳥取市白兎の国道9号で走行不能の車によって大渋滞を起こしたほどだ◆国土交通省などはきのう午後、白兎や鳥取市気高町浜村で大型車を対象にチェーン装着の指導を行った。昨冬のような立ち往生は二度とごめんこうむりたい。山陰道の全線開通に向け、さらに声を大にしたい◆今冬は東北、北陸を中心に「平成18年豪雪」以来の積雪量となっている。秋田県玉川温泉の雪崩事故、雪下ろし事故などによる多数の死者、青森県の車の立ち往生など豪雪地帯の悲劇が繰り返されている。地球温暖化が逆に日本に寒波をもたらしているとの指摘もある◆きょうは節分、あすは立春だが、まだ春の気配は感じられない。恵方巻きのことしの方角は「北北西やや右」。巻きずしをかぶりながら、季節風が弱まるのを願いたい。


2月2日

 東京に雪が降ると何かが起こる。歴史的な事件と結びつける人も多い。首都圏を今年一番の寒波が見舞った夜、また事が起こった。“石原新党”である◆昨年秋の大阪の陣で圧勝した橋下市長の維新の会。その余勢を駆って次は国政参戦の構えを見せている。石原都知事に「中京都」の大村愛知県知事も加わり、3大都市から国を変えようと決起の動きだ◆だが、石原新党と橋下新党、目指すところはどうか。石原新党の同志は国民新党の亀井さん、立ち上がれ日本の平沼さん。どちらかといえば一世代前の政治家、橋下さんら維新世代とどうみても不釣り合い。選挙目当ての“野合”とも映る◆本紙の政経懇話会で石破さんは「次の選挙は50年、100年先の日本の命運を決める」と強調。景気回復、財政再建、税と社会保障、TPPなど再生への課題は多い。橋下さんは明治維新の坂本龍馬にならって「船中八策」を持ち出した。大阪都構想だけでなく、新しい国づくりの「現代版・船中八策」をどう掲げるか。総理候補の一人に目される石破さんはさて…◆明日は節分。真っ白な雪に時折そそぐ日射しに暖かさを感じる。行きつ戻りつ、古いものと新しいものが交錯する。かすかな日脚の伸びに希望を託し、春を待つ。


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