韓国の余裕が日韓関係改善
領土問題で日韓関係は揺れ続けているが、ミクロの経済関係は進化しているようだ。知人の駐韓日本人外交官によれば、「韓国企業と日本企業の連携は高次元化しつつある」という。日本の技術や商社機能や潤沢な金融機能が、韓国の突破力あるマーケティングや商業化能力と合体して、(大宇建設と三井物産が北部アフリカ・モロッコ石炭火力発電所建設プロジェクトで手を結び、韓国ガス公社と三菱商事がインドネシアLNG生産基地建設のための投資協定を結んだ)新興国を中心に世界中で相乗効果を起こしている。伝えられている以上に日韓企業連携の効果は大きいようだ。
日韓の企業関係が進展する背景には韓国人の余裕あるマインドがあるという。この外交官も知人の韓国人経営者も「韓国が日本に対して自信を持っているくらいの間柄が、日韓関係にとって最も良い」という。韓国財界人の間には「そうは言ってもまだまだ日本にはかないません」「日本はもっとできるはずだから、もうちょっと頑張ってほしいなー」という反応が目立つという。「韓国が日本に追いつき追い越せの時代は悔しくて言えなかったセリフです」と言う。
韓国の財界人の多くは日本の高度成長期を知り、民度や技術の高さを熟知している。だからいまだに日本人の底力を脅威に感じ、グローバル企業も油断していない。サムソンの李会長は「日本のライバルの2倍の投資を続けてきた。追い越してからは、3倍の投資をして、二度と追いつかれないように引き離す努力をしている」と語っている。
厳しい過去を克服した成功体験
韓国の知人たちは、歴史的・地理的背景から韓国人が感じている切迫感とグローバルビジネスに臨むエネルギーの源を教えてくれた。「韓国パワーの源泉は『大国に挟まれていること』にある。歴史を振り返ると、列強である日本と中国が韓半島の領有を争った。常に侵略の危機を感じていた。米ソの代理戦争も行われた。今も北朝鮮と臨戦状態にある。第2次世界大戦、朝鮮戦争、IMF危機といった悲しい歴史を今でも各世代が覚えている。だから国民が共有する危機感の強さが他の国とは違う。そして、これらの悲劇から立ち上がってきた成功体験がある。それがやる気の源泉になっている」
韓国のもう一つのパワーの源は徴兵制だ。昔は政治家や財閥の子息には逃げ場があったが、今や有職者の子弟ほど徴兵制を逃れることはできないという。裕福に育っても、若いうちの一定期間、さまざまな背景で育った同世代と2年を超える集団生活を営む。そこでもちろん厳しい鍛錬が待ち受けている。韓国人男性の肉体的精神的な強さや連帯感はここで育まれるという。
もちろん、韓国にも徴兵制に対する根強い反対論もあるし、嫌がる母子もいる。しかし、大多数の国民の支持を受ける。今も戦争状態という朝鮮半島の悲しい事実があるからだ。徴兵制が成り立つのも地理的な位置と歴史の経験が背景にあるのだ。過去の悲しい歴史と今の北朝鮮との臨戦状況が徴兵制を国民に納得させる。そして2年4カ月に及ぶ鍛錬で、世界中でどこでも生きていかれるたくましさが若者の中に生まれるという。
韓国企業は中国やインド、南米、ロシア、そしてアフリカまで幅広くグローバル展開に成功している。新興国の厳しい環境でも、日本企業を圧倒し、しっかり根を張り、活躍している企業が多い。その背景には各世代が厳しい現実を直視しそれをいまだに覚えていることがあるという。
韓国社会は競争が激しく、ストレスがあふれ、自殺者も多いが、ダイナミックなエネルギーで製造業からエンターテインメントまで国際展開に成功しつつある。島国として守られ、豊かな土壌と水資源にあふれる環境を享受してきたわが国とは緊張感が違う。
この韓国のパワフルさをうらやむ日本人経営者もいるが、実は、若者を中心とする韓国人はわが国の“緩さ”を高く評価している。
「頑張らなくてすむ今の日本の“緩さ”がつくり出すカルチャー(サイボーグのように完璧に育成されたK−POPアーティストではなく、どこのクラスにもいるような近づきやすさのAKB48のように)は、韓国人の癒やしになっている。余裕がないほど競争している韓国社会では生み出せないカルチャーが素晴らしい」
悲しく厳しい歴史を生き抜いてきた韓国人パワーに、日本人は太刀打ちできそうもない。したがって、“緩さ”で勝負するのが日本にとって得策かもしれない。
(米ランド研究所上席研究員、前参院議員)
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