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潮騒

2017/5/14

 1年ほど前に取材した映画監督から著書が送られてきた。過去に戻れるという喫茶店の話だ◆いくつかの面倒なルールがあり、現実を変えることはできないが、会いたい人にもう一度会って、思いを伝えることができるかもしれない。恋人や夫婦、姉妹や親子。それぞれに事情があって、さまざまな別れを経験した人たちが言えなかった言葉を相手に伝える。現実を変えることはできないが互いの心は変わる。救われると言ってもいいのかもしれない◆昨年6月に母が他界した。2月に末期がんと診断されてから亡くなるまでの日々は、これまでの感謝の気持ちを伝えたいという思いと、伝えてしまっては余命がいくばくもないことを知らせてしまうという懸念の間でずっと揺れていた◆鳥取と大阪で離れていたこともあり、ゆっくりと話ができる機会は少なかった。病室に何度か泊った。私といる時は意識がはっきりしている事が多く、がん患者によく言われる強い痛みも少ないようだったが、それでも最後まで思いを伝えることはできなかった◆危篤の電話で慌てて飛び出したのは明け方だったか。高速に乗る前に「急がなくていい」という連絡が入った。監督の本はベストセラーとなり、続編が出版されている。私と同じような気持ちを持つ人がたくさんいるからだろう。(芽)
 

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