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映画「すべては海になる」撮影裏話 ダブル主演に聞く

2010年1月17日

 援助交際の体験がある女性書店員と、家庭崩壊の中でもがいて生きる男子高校生のそれぞれの心の再生を描いたラブストーリー「すべては海になる」(山田あかね原作・脚本・監督)が23日から、梅田ブルク7で公開される。ダブル主演の佐藤江梨子(28)と柳楽優弥(19)に撮影裏話を聞いた。

佐藤江梨子(左)と柳楽優弥=c 「すべて海になる」製作委員会
「初共演で楽しかった」と話す佐藤江梨子(左)と柳楽優弥=大阪市内のホテル

■10代の柳楽優弥君は神秘的

 −それぞれ実年齢に近く役に共感できるところがあったのでは?

 佐藤 前作の「秋深き」で相手は年上の男性(八嶋智人、佐藤浩市)だったので甘えられたけど、今回は10代の柳楽君なのでちょっと神秘的だった(笑)。その分、撮影に入るのが楽しみだった。それと、書店の店員さんは私の憧(あこが)れだったからとてもうれしかった。兄弟が書店で働いたことがあり、私もバイトしたいと何回も思ったが機会がなかった。映画の夏樹は私の分身のような気持ちだった。

 柳楽 僕は本をあまり読まないので、学校で本ばかり読んでいる光治という男の子が分からなかった。僕の場合、本ではなく映画を見ていろいろ勉強させてもらっていて、影響を受けることが多い。『フェイク』のアル・パチーノや『ケープフィア』のロバート・デ・ニーロに憧れてファッションをまねたり(笑)。映画に救われることも多かった。

 佐藤 映画に生き方を学ぶっていいなあ。柳楽君、ステキ! 私は今度の映画で夢見ていた世界を実現させることができてうれしかった。メークも素にして、服もユニクロで普通の格好にした。売り場に自分で「愛のわからない人へ」のコーナーを作っている夏樹に共感して演じた。実際、夏樹自身、これまで何人もの男性と付き合ってきて傷つくことが多かったし、思いを本に託している。その辺も私に似ている。

■サトエリさんの大ファン

 柳楽 僕が演じた光治の家庭は、父親が家庭内暴力、母親が万引し、妹が引きこもり。何よりも光治自身、学校でいじめに遭っていて、本の世界に閉じこもっているという厳しい環境。これはデビュー作の「誰も知らない」で、両親に見捨てられた4人兄弟の境遇に近いものがあったので、役は作りやすかった。役を演じる前にいつも台本に書き込みをするが、今回もぎっしり。いつも実力不足で落ち込みますが、昔からサトエリ(佐藤)さんのファンだったので前向きに主人公の世界に入っていけた(笑)。

 佐藤 柳楽君がカンヌ国際映画祭最年少で主演男優賞を受賞した時、私もそこにいて感動したのを覚えている。すごくうれしかった。

 柳楽 その時はすれ違いだったけど、会えて顔を見られ興奮したのを覚えている。「サトエリだ!」と(笑)。

 −佐藤さんは実際に書評を発表している。

 佐藤 20歳のころからいろいろ書かせてもらっているが、夏樹も出版社営業部の人(要潤)に書かせてもらっている。2人の関係は微妙で、その書評の原稿を勝手に直されて悲しい思いをする場面はすごくよく分かった。職場で本に囲まれて生活できるのは幸せだが、一方で、若いころ援助交際をしたことがあって、何人かの男性と付き合い傷ついた体験を持っている。そのトラウマを引きずっているところを表現するのが難しかった。それをどう克服するか。そこで柳楽君と知り合い、彼の純な気持ちに癒やされる。

■読んで癒やされる読書の勧め

 柳楽 僕の読書は8ページ読んで、あと320ページ残ったままで1冊が終わる(笑)。山田監督から「柳楽君は本の代わりに映画を見ているのだからそれも同じこと」と言ってもらえて安心した。それで本を読んでいる光治の思いが分かったような気がした。でも、この映画に出て、本は読まなくてはと思った。光治が本を読んで「死ぬ気になれば、生きていける!」と思うようになるのだから。

 −映画の中で夏樹が推薦する本と、個人推薦の本は違う?

 佐藤 ブックデレクションをやっていただいた幅允孝さんと相談し、夏樹のコーナーにいろいろな本をそろえてもらった。「夜と霧」(V・E・フランクフル)「たった一人の反乱」(丸谷才一)「あなた自身の生を救うには」(エリカ・ジョング)など。私の読書趣味は坂口安吾の「堕落論」、太宰治の「人間失格」に始まりいろいろ。本によって救われるということでは、ポーランドの詩集「終わりと始まり」(シンボルスカ)、茨木のり子の詩集「自分の感受性くらい」がお薦め。

 さとう・えりこ 1981年生まれ。東京都出身。神戸在住時に震災に遭う。モデルから出発し映画、テレビ、舞台など幅広く活躍。映画は「プレイガール」(2003年)「キューティハニー」(04年)を経て「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(07年)で演技開眼。大阪オールロケの「秋深き」(08年)の好演も印象深い。

 やぎら・ゆうや 1990年生まれ。東京都出身。初出演映画「誰も知らない」(2004年、是枝裕和監督)でカンヌ国際映画祭最年少で主演男優賞受賞。その後「星になった少年」(05年)「包帯クラブ」(06年)「戦慄迷宮3D」(09年)など。テレビにも進出中。初の小説「止まない雨」も出版。15日に豊田エリーと結婚した。