大阪ニュース

高齢、孤立 問題根深く 「ごみ屋敷」深刻化

2017年5月17日

 自宅に大量のごみがあふれる「ごみ屋敷」問題が大阪で深刻化し、悪臭や害虫に関する苦情が後を絶たない。孤立した高齢者がごみをため込むケースが多く、地域社会とのつながりや家族関係の希薄化も浮き彫りにしている。大阪市は強制的に撤去できる対策条例を定めたが、家主の心身のケアを重視する「ソフト路線」を取っているのが実態で、解決のめどが立たない事例も目立つ。

ごみであふれた大阪府内の部屋(トリプルエス提供)

 大阪市内の住宅街。高齢女性が1人で暮らす家は、生ごみや空き缶、ペットボトルなどで足の踏み場がなく、いっときは道路にまではみ出していた。「ゴキブリが…」。近隣住民は顔をゆがめる。

 市は撤去を求めた。しかし、女性は「ごみではなく資源」と主張して取り合わない。

 「敷地内に踏み込むわけにもいかないので、繰り返し指導するしかない」。区の担当者は窮状を漏らす。

■自己放任

 内閣府の2010年調査では、ごみ屋敷の状態に陥っている高齢者を全国で約1万800人と推計。大阪市は13年、全24区のうち15区で計77件のごみ屋敷を確認した。

 背景にあるのは、生活への意欲を失ったり、行動を管理できなくなるセルフネグレクト(自己放任)の増加だ。周辺住民の相談で発覚することが多い。

 市の13年調査によると、ごみ屋敷の「原因者」は1人暮らしが約8割を占め、年代別では60歳以上が約6割に上った。生活保護受給者が約4割だったことから、貧困との関連性もうかがわせる。

 「近所と関わりのない人が多い」と市の担当者。家主が認知症や要介護となっている事例も報告されている。

■火災を誘発

 周辺住民への影響は深刻だ。「ネズミやハエなどの害虫被害が心配」「火事の原因になる」。各区役所にはそんな声が寄せられている。区職員が訪ねると、ごみの重さで崩れそうな家もあった。

 市は対策を迫られるが、私有財産の侵害につながりかねず、対応に苦慮している。家主が話し合いに応じない、ごみ処理費を賄えない−などの理由でごみ屋敷の半数以上は解決策を見いだせていないという。

 一方、大阪府内のある清掃業者にはごみ屋敷の片付け依頼が急増し、昨年は100件を超えた。8割以上が女性という。同社の社員は「どの現場も一人の力ではどうにもならないほどごみが山積みとなっている」と現状を説明する。

■対話で解決

 ごみが散乱した自宅で死亡していたり、道にあふれたごみを片付けない所有者が道路法違反容疑などで逮捕される事件も各地で起きている。

 法や制度が想定してこなかった問題に対応するため、市は職員による任意の立ち入り調査や行政代執行ができるよう条例に規定した。ごみの処分などが経済的に困難な場合には支援できるよう要綱も定めた。

 ただ、行政代執行に踏み切った事例はまだない。市環境局は「いったん片付いても、本人が変わらなければ、再び元の状況に戻ってしまう。あくまでも対話によるアプローチで解決していきた」としている。