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蒼井が大阪女の破滅を 彼女がその名を知らない鳥たち

2017年10月13日

 大阪府出身で主婦、僧侶、会社経営など経て小説家になった沼田まほかるの2作目同名作を「凶悪」(2013年)の白石和彌監督が映画化。まほかるミステリー小説の映画化は吉高由里子主演の「ユリゴコロ」に続いて2本目。登場人物について「共感度0%」といわれる世界であるが、蒼井優=写真左=が主演して、大阪の下町で生きる破滅的女を好演している。

(C)2017「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

 汚いアパートに住む30歳くらいの北原十和子(蒼井)は日々ぶらぶらし、だらしなく暮らしている。生活費は同居している15歳年上の佐野陣治(阿部サダヲ)=同右=に頼っており、自分はビデオショップ店に行って「これは不良品だ。どうしてくれる」と文句を言っている変な女である。

 腕時計の修理を出した店では「直っていない」とケチをつけて、売り場主任の水島(松坂桃李)に新品と無料交換させる。実は十和子は男前の水島に目をつけており、結果的に水島も女好きな男で緩い2人はすぐに関係を持ってしまう。アパートで同居する陣治には指一本触れさせないのであり、工場勤めでいつも油にまみれている陣治を冷たくあしらっている。

 十和子は水島と適当な男女関係を続けるうち、陣治の存在が余計にうざくなってくるが、彼は十和子に殴られても献身的に尽くす。それは病的でもあるが、彼には十和子には内緒の秘密があり、やがて彼女が昔好きで付き合っていた黒崎(竹野内豊)の存在が明らかになってくる。黒崎は十和子の気持ちを利用して取引先の金づる男(中嶋しゅう)に体を提供させる男だった。

 その黒崎が最近、姿を見せない。彼には妻(村川絵梨)がいて、どうやら失踪したことが分かってくる。まだ黒崎に未練を持つ十和子は、不吉な思いを持つが、まだ周囲の人間たちの間で恐るべきことが起きることを知らない。

 蒼井が自堕落ながら片隅に闇を抱えて生きている生身の女をネチッこく演じており、阿部の不潔なダメ男ぶりも真に迫っている。松坂の嫌みな浮気男にはヘドが出そうになる。やがて、「まほかるワールド」のどんでん返しの先に白石監督の「愛の仕掛け」がジワッと見えてくる。本年度ベストワン有力候補の力作である。

 クロックワークス配給。28日から梅田ブルク7ほかで公開。