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絶妙な菅田・桐谷のコンビ 映画「火花」

2017年11月10日

 芸人の又吉直樹(37)の同名芥川賞受賞作を芸人で映画監督の板尾創路(54)が映画化。「板尾創路の脱獄王」(2010年)「月光ノ仮面」(12年)を発表し、少し間が空いていたので気になっていたが、監督第3弾は板尾監督にピッタリとフィットした青春芸人映画になった。前2作にあったアナーキーな喜劇センスを今回も根っこに置きながら、シリアスで悲しい若者の人生ドラマを絶妙に描いている。

菅田将暉(右)と桐谷健太=(C)2017「火花」製作委員会

 売れない漫才コンビ・スパークスの一員、徳永(菅田将暉)が、同じような先輩漫才コンビ・あほんだらの神谷(桐谷健太)と熱海の小さな野外場で出会うところから、2人の奇妙な友情物語が始まる。ひと回り年上の神谷の漫才にほれた徳永は「弟子に」と頼んで、そこから流れる約10年の付き合いが描かれる。

 徳永が神谷の芸人術にほれたように、神谷もまた徳永の真面目で真っすぐな人間性に好意を持っている。2人が会って交わす会話は必然的に「漫才」になってしまうのがおかしい。それはさながら芸人訓練であり、同時に人間としての修業のように思える。徳永が神谷のアパートに行って、金髪の真樹(木村文乃)が同居していたのに驚き、2人の関係の成り行きを心配しながら、真樹に好意を持つ徳永の思いが切ない。

 やがてやってくる神谷と真樹の別れに徳永の失望は大きいが、何よりもスパークス相方の山下(2丁拳銃の川谷修士)がコンビをやめると言い出し困惑する。徳永と神谷はすでに大阪を離れ東京で生活しているが、街を歩き、酒場で飲みながら大阪弁丸出しの光景がいい。若い芸人の多くが通る道であろう。

 徳永が引退を決め山下を相手に最後の「逆説漫才」をするシーンで、「お前の漫才は面白くないんじゃ!」と自虐的に責める。菅田(24)が涙を飛ばしながらある決別を語る芝居に泣かされる。神谷の桐谷(37)がまたそれでもへこたれない芸人魂を保って生きている姿も胸に迫る。真樹の木村(30)はどうしているだろうか。板尾演出は決してベタついていない。3人の若者へのエールが又吉原作へのリスペクトにつながっているからだろう。菅田・桐谷と同じ大阪出身コンビの板尾監督と豊田利晃監督(48)が脚本を担当。

 東宝配給。23日から大阪ステーションシティシネマほかで公開。