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子どもの権利守れ 天王寺のNGOが冊子

2018年1月20日

 子どもの権利条約を推進する「子どもの権利・NGO大阪」(大阪市天王寺区)は、府内の子どもが被っている権利侵害の実例をまとめた冊子『権利条約をすべての子どもに』の普及啓発に乗り出す。冊子では貧困や児童虐待、いじめなど過酷な状況にさらされている姿を紹介。すでに英訳版を国連に提出しており、国連を通して日本政府に条約を順守させるよう働き掛ける考えだ。

冊子『権利条約をすべての子どもに』を手にする弁護士の渡辺さん(左)と、NGO事務局長の大谷ちひろさん=大阪市浪速区

 同条約は1989年に国連総会で採択され、日本は94年に批准。子どもの最善の利益を考え、発達に欠かせない権利の実現を締約国に求めている。

■育たぬ権利思想

 特に子どもを保護の対象ではなく、権利の主体として位置付け、大人に意見を述べる意見表明権や虐待からの保護、健康や医療の確保などさまざまな権利を保障している。

 しかし、同NGOなどによると、日本では十分に保障されていないのが現状だという。

 同NGO代表委員で大阪弁護士会子どもの権利委員会所属の渡辺和恵さん(71)は「日本では子どもを人格を持つ一人の人間として認める権利思想が育っていない。こうした状況を背景に国は必要な予算を十分に確保していない」と指摘する。

■現実知って

 国連は条約の締約国を対象に、権利実現の進ちょく状況を確かめるための5年に1度の審査を、今年9月に実施する予定だ。

 審査を控え、すでに政府は国内での取り組みをまとめた報告書を国連に提出。この中で「権利の保護、促進に努力している」とし、予算を巡っては「必要な資源を十分に確保している」と主張した。

 これに対し、同NGOは「政府報告には条約の理念をまともに受け止める姿勢がない」と批判し、大阪の“現実”を伝えようと、冊子の大部分を英訳し、東京の全国組織を通じて国連に提出した。

■権利の阻害

 冊子は大阪の教育行政の在り方や子どもに関わる活動に取り組む、20の団体・個人の寄稿で構成されている。

 ある私立高校の教員は、大学進学を目指す女子生徒の声を紹介。授業料などで約460万円かかるが、母親が突然、失業し、学費のために早朝4時半に起きて仕事に出掛ける状況に「私のわがままに巻き込んでしまうようで申し訳ない」「日本はわずかしか税金を使ってくれない」と、やり場のない悩みを抱える。

 児童養護施設の職員は、虐待や親の精神障害など子どもたちのさまざまな入所理由を知り、感情が揺さぶられる一方で「かわいそうだと思うのは失礼。子どもたちにもそう思ってほしくない。未来を見てほしい」と書いている。

 弁護士の渡辺さんは「貧困と格差の広がりで子どもが学習し、成長する権利が阻害されている。実態を明らかにして養育環境を保障すべきだ。政府がしっかりと予算を確保し、有効に使われる社会を目指したい」と話した。

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 冊子は一部800円(税込み)で販売している。別途郵送料が必要。問い合わせはファクス06(6364)3366、いわき総合法律事務所の大谷ちひろさん。