大阪ニュース

森岡めぐみのホール&劇場 ドイツ見聞記(1)

2018年2月3日

 こんにちは。大阪城の近くにあるクラシック音楽ホール、いずみホールで働いている、森岡めぐみです。以前の連載「ステージドア」ではお世話になりました。皆さま、お元気でしたか。

13の劇場やホールを巡った。その一つのエッセン市立「グリロ・テアター」(正面)
子ども向けクリスマス童話劇「人魚姫」上演時の様子=2017年12月6日、ヴォルフスブルク市立劇場「シャウロン・シアター」

 わたしは昨年の12月に11日間、駆け足でドイツの13の劇場やホールを巡ってきました。文化庁が全国公立文化施設協会に委託して実施している「劇場・音楽堂等スタッフ交流研修事業」に参加したのです。

 この研修、2012年に制定された劇場に関する法律をもとに、劇場やコンサートホールのスタッフの研さんを目的としたもの。専門家と一緒に海外の劇場を訪れ、施設見学だけではなく、現地のスタッフとのミーティングも行います。

 開館以来、ずっと同じホールで仕事をしてきて「井の中の蛙大海を知らず」状態のわたしにとって、絶好の機会。願ってもない体験でした。そこでこのコラムでは、そんなわたしがドイツの劇場で、びっくり、あるいは感心、そして、ああ、そうなんや、と考えさせられたことを書きたいと思います。

 まず、ドイツの劇場事情について少しばかりお伝えしましょう。日本の感覚とはかなり違います。『地域主権の国 ドイツの文化政策』(藤野一夫ほか編、美学出版、2017年)という本によると、小さな単位の領邦国家が統一されてできたドイツでは、それぞれの州の独立性が高く、文化政策も基本、州単位で行われています。

 劇場に対する政策は手厚く、例えばベルリンでは「首都とはいえ、人口350万人足らずのベルリン都市州に、日本の文化庁予算の総額を上回る1200億円近い公的文化予算が投入されている」(同)であり、「ドイツの文化予算の分野別助成の特徴は、劇場・音楽分野に約4割が交付されていること」「ドイツの公共劇場におけるチケット収入と補助金の割合は平均値で15%対85%である」(同)なのです。実際、今回訪れた公的な活動をする公共劇場(公立、私立含む)に対する公的支援は、手厚いものでした。

 旅の中で忘れられないシーンがあります。ヴォルフスブルク市という12万人規模の街の市立劇場を訪れたときのこと。小学生の鑑賞公演に同席させてもらいました。開演直前、客席が暗くなり始めると、子どもたちが自然発生的に「うおおおおお」って声を放つのです。そうですね、甲子園球場で9回表、あと一人で試合終了というとき、スタンドが「うおおおお」となるでしょう?あんな感じです。

 「いよいよ始まるんだあ」、タイガースファンが勝利にかけるのと同じような期待の高さで、舞台が楽しみで自分を抑えきれない子どもたち。感激、というより衝撃を受けました。劇場と市民の深い結びつきを垣間見た瞬間でした。

 次回は、とても丁寧につくられている、子ども向けの教育プログラムについてのリポートをお届けします。