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幻の卒業式申し出ゼロ 風化危惧「お一人でも」

2018年2月4日

 大阪市中央区の大阪国際平和センター「ピースおおさか」は毎年3月、当時の国民学校6年で、戦災で卒業証書をもらえなかった人たちのために「幻の卒業式」を実施している。ところが、今年は2日現在でまだ1人も申し出がない状況。最初の大阪大空襲から間もなく73年を迎える。体験者の高齢化などに伴う戦争の風化が一層危惧される中、同センターでは「たとえお一人になっても継続したい」と、証書授与の申し出を呼び掛けており、式前日の3月10日まで受け付ける。

申し出があった該当者に授与される卒業証書(サンプル)
7人が出席した昨年の「幻の卒業式」

■高齢化の現実

 第1次大阪大空襲は太平洋戦争末期、1945年3月13日深夜から14日未明にかけて起きた。大阪市中心部が被災し、多くの学校で14日予定の卒業式が中止となった。校舎自体が失われ、卒業式出席のために疎開先から戻っていた児童が亡くなった例も数多くあったという。

 同センターでは「子どもたちの卒業式も奪った戦争の時代を知ってもらう」という意味も込め、2011年から独自の「幻の卒業式」を実施。証書はあくまでも公的ではなく、記念品的な位置付けではあるものの、当時の実物を参考に再現。これまで61人に発行している。

 近年は、孫がこの取り組みをインターネットなどで知り、祖父・祖母への“プレゼント”として申し出るケースも増えつつあるという。一方で病気や体調不良で出席できず、家族が代理を務めたほか、出席を楽しみにしながら式当日までに亡くなった例もあり、体験者の高齢化が現実として差し迫る。

■記憶受け継ぐ

 戦争体験者から直接話を聞く機会が激減する現状にあって、同センターが提唱しているのが「語り継ぎ部」の重要性だ。体験者である語り部に代わり、次世代を担う人々が体験者の記憶を後世に伝える重要な役割。3月恒例の「大阪大空襲平和祈念事業」では、識者や実践者を招いて語り継ぎ部の育成に向けた講演会・交流会などを開催している。

 今年は「幻の卒業式」と同じ日に、パーソナリティーの浜村淳さんを講師に迎えての開催を計画。戦争の記憶を伝え続けるためのよりよい方法を探る。

 現状では、まだ「語り継ぎ部」という言葉を知らなかったり、語り継ぐ意志があっても、聞き取りや伝える方法が分からないケースが多い。

 こうした課題を踏まえ、同センター専門職員の田中優生さんは「ご自身も戦争体験者で、インタビューや『伝える』プロである浜村さんのお話を通じて、皆さんの『気付き』につながってほしい」と期待を込める。

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 講演会は3月11日午後2時〜3時15分。参加無料(要入館料)。定員250人で事前の電話申し込みが必要。問い合わせは電話06(6947)7208。