大阪ニュース

他者との共生描く 映画「羊の木」吉田監督に聞く

2018年2月7日

 山上たつひこ(70)、いがらしみきお(63)というレジェンド2人が描いたコミックを映画化した「羊の木」(アスミック・エース配給)がTOHOシネマズ梅田ほかで上映されている。「主人公・錦戸亮が他者との共生というテーマを背負って、反射する演技をしてくれた」という吉田大八監督(54)に話を聞いた。

「錦戸さんと7人の俳優が見せ場を作ってくれている」と話す吉田大八監督=大阪市内のホテル

 山上の「がきデカ」、いがらしの「ぼのぼの」は往年の大ヒットギャグまんがとして知られている。その2人が組んだ「羊の木」は2011年に発表され、14年に文化庁メディア芸術祭優秀賞に選ばれた。「2巻が発表されたころ、プロデューサーから勧められて読んだ。まだ未完(全5巻)だったが、原作の争奪選が起こると思って早めに映画化に手を挙げた」

 監督自身、「がきデカ」は小学生、「ぼのぼの」は高校生のころに読んだという。「2人が組んで何を仕組んだのか。それだけでワクワクしたし、読み進めながら予想がどんどん裏切られ混沌(こんとん)としてきて、幕切れは『さすが!』とうなった。スピードが加速したまま空中分解するような衝撃だった」

 映画はある寂れた地方の港町・魚深市の市役所に勤める月末一(錦戸亮)が上司から「元殺人犯の受刑者6人を市が受け入れることになったので、その担当を」と告げられるところから始まる。「6人は出所前に保釈されてその町に住み、市の世話で働き生活する。10年何もなければその後は自由になる。これは刑務所施設の予算削減と、地方の人口減少対策を兼ねた国策という設定になっている」

 元殺人犯を演じるのは水澤紳吾、市川実日子、田中泯、北村一輝、優香、松田龍平という俳優陣。「当然それぞれ殺人の内容が違うし、性格も違う。彼らを迎え入れる普通人の月末は戸惑うが、それなりに受け入れて、個々に対応していくプロセスを描く。6人は他者であると同時に、普通人にとって『異物』ともいえる。怖いけど、笑ってしまうような原作の世界観を映画でどう出していくか」

 吉田監督の作品系譜はデビュー作「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(07年)や宮沢りえ主演「紙の月」(14年)など「強烈な個性を持った人間」が主人公の場合が多い。今回は6人の元殺人犯と、もう一人、都会から田舎に帰って来た月末の同級生(木村文乃)が個性派担当で、月末が彼らと向き合ってどう変わるかが見どころだ。

 「ある町に、よその人間がやって来て、一緒に生活をする。それにどう対処するか。これは国際的な移民問題などとつながる。他者とどう共生するかは、言ってみればどう友達になるかということでもある。後半、月末の錦戸さんと元殺人者の松田さんがそれで葛藤するところにそのテーマを込めた。錦戸さんが7人の個性派俳優と競演し、反射する演技を見せている」