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平成最後の刊行へ 全国公募戦争体験手記集

2018年3月4日

 1988年から全国公募の戦争体験手記集『孫たちへの証言』を毎年夏に刊行している新風書房(大阪市天王寺区、福山琢磨代表)に、各地から多くの原稿が寄せられている。体験者が減る中で「後世に記しておきたい」という熱意が、行間に垣間見える貴重な証言ばかりだ。とりわけ今夏の第31集は平成最後の刊行となる。長年編集を手掛ける福山さん(83)は、今月末の締め切りを前に「新しい時代に向け、さらなる記録遺産の役割を担っていきたい」と奮起する。

「伝承編」担当者の上野慎吾さん(左)と投稿に目を通す福山さん=大阪市天王寺区の新風書房
復刻セットの製作が進む『孫たちへの証言』

 『孫たちへの証言』の原点は、福山さんが開講する「自分史講座」の課題だった。当時の受講者が自身の生い立ちや若いころに抱いていた夢などを記述。やがて、いや応なく戦争の渦に巻き込まれていく共通の体験をテーマに、1冊の文集にまとめて反響を得た。第3集からは読者の強い要望で一般公募とし、昨年の第30集までの投稿数は約2万編、掲載総数は2384編に上る。

■記憶を記録に

 編集の信条は「風化する記憶は記録させることで生き続ける」。文章に、いかに具体的な日時や場所、人物や学校、組織などの名前を多く盛り込めるかを重点に置く。今年も80〜90代を中心に、沖縄戦や東京大空襲、予科練、満州開拓団など多くの体験談が届いた。「伝承」として遺族など体験者以外からの投稿も増えている。

 「どれも載せてあげたいという気持ちは常にある」という福山さんは、入選候補に不明な点があれば投稿者に問い合わせ、内容を精査する地道な作業に取り組む。30年分の全ての投稿を項目別に分けたデータベース化も計画中で、膨大な“記録遺産”の構築を目指している。

■復刻版を製作

 第1集から30余年を経た現在も在庫の問い合わせが絶えない。現状では多くが在庫切れしているが、「孫が通う学校に寄贈したい」「亡き父、母の証言が載っている」といった人々の声に応えようと、同書房は復刻本の全集セット製作計画に着手。まずは1年間で第1〜10集のセット(定価1万368円)を復刻し、3年かけて30集まで配本する予定だ。

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 第31集のテーマは「記録することで戦争抑止へつなげよう」。1600字位内で匿名不可。31日締め切り(消印有効)。住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒543−0021 天王寺区東高津5の17、新風書房「証言集」係へ。メール送稿も可。問い合わせは電話06(6768)4600。