大阪ニュース

映画「息衝く」 木村文洋監督に聞く

2018年7月6日

 青森県六ケ所村を舞台にした「へばの」(2008年)でデビューした木村文洋監督(38)の3本目の新作「息衝(いきづ)く」(team JUDAS 2017配給)が7日から、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開される。政治や宗教に家族の問題を絡めた青春映画で「信じることと、幸せな時間を探る作業だった」という木村監督に話を聞いた。

「学生だった京都時代によくシネ・ヌーヴォに来た」と話す木村文洋監督
柳沢茂樹(左)と長尾奈奈=(C)team JUDAS 2017

 青森県出身の木村監督は大学時代から自主映画を撮っていた映画青年で、卒業後も自主映画の現場に就いた。監督デビュー作「へばの」は青森の核燃料再処理工場を舞台にした家族のドラマで「僕自身がこの話を聞いたのは小学生の頃で、実際にそこへ行って見たのは2006年。もう出来ていることにがくぜんとし、今、何が言えるのかと思った」。

 「へばの」の主人公家族は放射能の恐怖と闘いながら崩壊した。「息衝く」はその家族の10年後が描かれている。5年前に2本目の作品「愛のゆくえ(仮)」を発表し、逃亡中のオウム真理教元幹部と、彼をかくまった恋人のひそかな時間を描いた。「青森時代を含めて、僕にとって信じられた時間、幸せだったときが本当にあったのかどうかを探ろうと思った」

 「へばの」とは青森弁で「さようなら」の意味。同作品で父と妹を故郷に置いて、母と家を出た兄が今回「息衝く」の主人公。今作で都会の市役所で働く中年男の則夫(柳沢茂樹)がそれで、生活に困った人たちの面倒見がよく、子どもの頃から宗教団体に所属し信仰と同時に政党の活動運動にも参加。「2作を撮って味わった無常感、不確かさと同時に、信じることと、幸せな時間もあった。多少の後ろめたさを感じつつ主人公の時間を振り返った」

 映画の嗜好(しこう)は山形国際ドキュメンタリー映画祭に通って「世界の生々しい動きを見たことと、東日本大震災以降、いろんな分野で世の中の動きが変わったことがシンクロした。原発問題で変わらねばならないのに政治が追いついていない。それは宗教も同じで、言葉では言いにくく、悩みを抱えている人は増えている」

 則夫の先輩に古屋隆太、寺十吾、幼なじみに長尾奈奈が扮(ふん)している。長尾は片岡礼子似の無名塾出身の女優で好演が光る。「柳沢さんら男優陣も難しい役をうまく演じてくださった。次回作は高齢化問題を扱いたい」と木村監督の心意気はつながっている。