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高齢者の孤食なくそう 公社団地に「みんな食堂」

2018年9月20日

 大阪府住宅供給公社は、管理する団地内の空き室を活用して居住者向けに「みんな食堂」を開設した。障害者就労支援を行うNPO法人チュラキューブ(大阪市中央区、中川悠代表)との共同実施で、食事を調理配膳するのは知的障害や発達障害がある若者。高齢者の孤食や閉じこもり解消とともに、障害者の働く場をつくる取り組みが注目される。

「みんな食堂」で笑顔で会話を楽しみながら食事をする居住者ら=大阪市住吉区

 「こんにちはー」。平日の正午すぎ、大阪市住吉区にある「OPH杉本町」の一室に、一人また一人と高齢女性が訪れてきた。室内は2DKの間取りが1DKに改装され、20人ほどがゆったりと座れる大きなダイニングテーブルが置かれている。

 女性たちが席に着くと、エプロン姿の青年が慣れない手つきながらゆっくり配膳を始めた。

■“孤独の塊”

 同団地は2007年完成の賃貸物件。全72戸のうち41戸が家賃補助等がある「高齢者向け優良賃貸住宅」で、70歳以上の居住者は全体の約6割を占める。高齢単身世帯も多い。

 「高齢者向けとあるので、何か集まりでもあるのかと思っていたが、何もなくてぼうぜんとした。鉄のドアを閉めると、“孤独の塊”になった」。今年1月に入居した吉田多喜子さん(70)は苦笑する。

 コミュニティー形成と空き室解消。二つの課題が浮上する中、出合ったのがビジネス街・北浜で就労継続型支援B型事業所の「GIVE&GIFTカフェ」を運営するチュラキューブだった。

 カフェは障害のある利用者が調理補助を行い、仕上げと接客は健常者が担う形態。チュラキューブもまた、利用者の就労支援の拡大を模索し、昨年11月から協議を重ね、今年8月に“開店”した。

■11年目の出会い

 食堂は月、水、金曜日の週3日。正午から午後2時まで開ける。食事は北浜の店で調理した物を運び、温め直して提供。毎回、施設の利用者2、3人に村井究施設長(50)が同行する。

 メニューは和食がメインで一食450円。一汁三菜、薄味が基本だ。「おいしいし、一人だと料理もしなくなる。何より、ここに来ると誰かとお話ができるのがうれしい」と辰巳安英さん(82)。現在は独り暮らし。居住して11年になるが、個人的に付き合う住人はいなかった。「食堂ができて、初めて話した」と、隣に座る吉田さんと笑い合った。

■つながるきっかけ

 食堂は運営側にもいい変化をもたらしている。「利用者は外部の人と触れ合う機会がほとんどない。目の前で食べてもらい、『おいしかった』と言ってもらえることは、良い効果がある」と村井施設長。北浜では、利用者は調理補助のみで接客はしない。当初は不安も感じていたが、今では少しずつ声掛けもできるようになったという。

 同公社の経営管理部住宅経営課団地再生グループの豊嶋洋子主事は「家にこもりがちな高齢者が、外に出る前段階として食堂を使ってもらい、地域につながるきっかけになれば」。食堂を軌道に乗せるとともに、今後も団地内の空き家利用を模索していくという。