歩く

 人は言った。「歩くことは生きる喜び」。歩くことでさまざまな地域の魅力を肌で感じ、吹き抜ける風には季節の移ろいも実感することができるウオーキング。健康志向の高まりに無関心を決め込んできたアラフォー記者が、関西のあちらこちらを訪ねて生きる力を取り戻す。

灰賦峠古戦場から南海深日町駅へ

2018年9月20日

大阪最南端の町を巡る

大川新橋から西に多奈川第2火力発電所(長期計画停止中)を望む。後方は友ケ島水道
金乗寺の山号は本願寺第8代蓮如によるもので、石山合戦では顕如が滞在したことから、別名は「深日御坊」。樹齢500年を超える境内のイチョウは府の天然記念物で「大阪みどりの百選」にも選ばれている

 大阪府最南端にある岬町。海あり、山あり、大都会の喧騒(けんそう)からしばし離れることができる。残暑の厳しい8月後半のある一日。家族連れでにぎわう南海電鉄のみさき公園駅を出発し、和歌山大観光学部の学生が活動の一環として設定した約5・6キロの行程を頼りに、町の魅力を巡ることにした。

 自然豊かで、全体が大阪湾へ半島状に突き出たこの町は、水産業が盛んな漁師町でもある。旧国道を西へ向かうと、ほどなく漁港が開けてくる。

■にぎわう魚市場

 海風に誘われ、視界に飛び込んできたのは深日(ふけ)漁港。連日午後3時頃から一般向けの魚市場が始まり、夏は旬を迎えたハモ、タコ、アジ、アコウ、キジハタなどが水揚げされる。

 市場にある土産物店では、店主の南勝佳さん(49)が名物のいか焼きを焼いてくれた。本業は漁師で、一本釣りのブランド魚「泉州泉アジ」の仕掛け人でもある。底引き網では魚が弱ってしまうため、手間を惜しんできたが「せっかく一匹ずつ釣っているので」とブランド化に取り組んでいるのだという。

 釣り船の船主でもあり、イルカウオッチングや花火など観光クルーズにも出掛ける。各地から「とにかく港に来てもらいたい」と知恵を絞っている。

■信長の足跡

 知れば知るほど、歴史にゆかりが深い町であることが分かる。

 「灰賦(はいぶ)峠古戦場」跡は、織田信長と一向宗門徒が一戦を交えた「石山合戦」の舞台。本願寺の蓮如や顕如も宿泊したことから、近くの金乗寺(こんじょうじ)は“深日御坊(ふけごぼう)”とも称された。

 また、陵墓に指定された前方後円墳を筆頭に町内各所に古墳が点在し、和歌山県との県境には、平安時代に弘法大師と並んで称された「三筆」の一人、橘逸勢(たちばなのはやなり)の墓とその伝説が残る。「化石寺」こと宝樹寺には、ナウマンゾウの化石があるというから驚きだ。

 海釣り公園やサイクリングも楽しめる人口1万6千人の小さな町。そこには、1日では歩き足りない魅力がぎっしり詰まっている。

 ◆コース 南海みさき公園駅―灰賦峠古戦場―金乗寺―深日漁港―国玉神社―深日行宮跡―旧深日駅跡―南海電鉄深日変電所―石投げ地蔵―宝樹寺―南海深日町駅(全長約5.6キロ)