大阪発 羅針盤

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都構想住民投票を彷彿

2016年5月9日

改憲派・護憲派の論争加速

安倍首相のメッセージが放映された改憲派集会=3日、大阪市内

 安倍晋三首相が憲法改正に積極的だ。憲法改正のためには夏の参院選で改憲勢力が国会発議に必要な3分の2に届き、国民投票で過半数の賛成を得なければならない。改憲派とそれを阻止する護憲派は世論形成に余念がなく、その様相は「大阪都構想」の是非を問うた昨年5月17日の住民投票を彷彿(ほうふつ)させる。憲法改正の是非も次世代に関わるだけに有権者、国民として両派の訴えを読み解く姿勢が大切だ。

 改憲派が憲法記念日の3日に大阪市内で開いた集会。おおさか維新の会幹事長の馬場伸幸衆院議員は「私たちは都構想で住民投票をした。国民投票のミニチュア版だった」と切り出した。

 都構想を否決した住民投票について、馬場氏は、都構想反対派から市営住宅や水道の料金が上がると言われて投票行動につながったように思うと回想。憲法改正の国民投票でも戦争と結び付ける「マイナス」面を訴えられれば投票行動に影響するという課題を挙げた。

■スター・ウォーズ

 マイナスイメージを拭い去るように、改憲派が強調するのが地震やテロ対策だ。「国がトップダウンで国民の生命財産を守られるようにしたい」と大阪集会の主催者は、自民党憲法改正草案にある緊急事態条項の必要性を主張。戦力不保持を定めた9条2項にも言及し「自衛隊を明記すべきだ」と訴えた。

 「憲法改正に向けて共に頑張りましょう」とは大阪集会などに届いた安倍首相のメッセージだが、護憲派も黙ってはいない。

 大阪弁護士会が4月23日に開いた集会で、内山宙弁護士が示した題材は映画『スター・ウォーズ』だった。銀河共和国の危機だとして議会は非常事態宣言し、議長に非常大権を与えて軍隊を創設したが、危機が去っても議長は非常大権を返上しない。作品を通して「非常事態宣言のコントロールが利かなくなると後で民主主義を取り戻すのがどれだけ大変かがよく分かる」と緊急事態条項をけん制した。

■リテラシー必要

 改憲派、護憲派の論争は著名人にも見られる。

 ジャーナリストの桜井よしこ氏は3日の東京都内の改憲派集会で「憲法を論じるとき、政府と国民の対立の構図で考えるようなやり方は間違い」と諭し「議論を尽くし、日本の明るい未来を目指して憲法改正を実現したい」と続けた。一方、作家の落合恵子氏は4日の兵庫県内の護憲派集会で「テロ対策の言葉が出たとき、ズルッと動いてしまう市民の心があることも事実だが、言葉の裏を読み取るリテラシー(応用力)が必要だ」と指摘した。

 両派の訴えが加速する中、都構想反対派の論客だった東京都世田谷区の保坂展人区長は護憲派講師として再び関西入りしてこう説いた。「都構想が否決された直後、国会は安保法制一色になった」−。国民投票の“ミニチュア版”だった住民投票から1年。参院選は憲法改正の是非が争点になりつつある。

 「大阪都構想」住民投票 政令市の大阪市を廃止し、五つの特別区に分割する大阪都構想の賛否を問う住民投票は2015年5月17日に投開票され、否決された。投票率は66・83%。否決の場合、大阪維新の会代表の橋下徹市長(当時)は同年12月の市長任期を全うした上で政界を引退する意向を表明していた。