大阪発 羅針盤

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待機児童解消へ保育士どう確保

2016年5月21日

職場環境、定着の鍵

職場環境の改善に取り組んできた小市保育園で、子どもと笑顔で向き合う保育士=大阪市東成区

 保育所の待機児童解消に向け、国や地方自治体が保育士確保に躍起だ。賃金割り増しの方針が示され、評価する声は上がるが、「抜本的な解決にはならない」との指摘も。働き続けたいと思える職場環境が人材の定着に必要なためだ。賃金の改善とともに魅力ある職場づくりに向けた対策が“車の両輪”として求められている。

 14日に大阪市内で開かれた幼稚園と保育所の就職フェアには、約50の幼稚園と保育所が参加し、若者ら約250人が来場した。

 「保育士は一日中走り回って、休憩は午睡の時ぐらい。子守のように思われているが激務に近い」。来春専門学校を卒業予定の女性(26)は、実習先での様子を思い返す。その上、保育士の賃金は月額平均22万円と全産業平均より11万円余り低い。実習を経て保育士を諦めた友人もいた。「待遇面の改善は不可欠だ」

■賃金改善策

 こうした声を受け、金銭面に着目した支援策が今月、相次いで示された。

 政府は18日にまとめた「1億総活躍プラン」で保育士の月給を約6千円増やすと提示。ベテラン保育士にはさらに積み増しする。

 また大阪市は、新規採用保育士に2年目まで毎年10万円を給付する独自案を掲げた。近隣自治体との“保育士確保競争”に備えるのが狙い。吉村洋文市長は19日の市議会常任委員会で「大阪市を選んでもらうため、支援をダイレクトに届ける」とアピールした。

 待遇改善を歓迎する声はあるものの、冒頭の就職フェアを主催した保育専門の人材派遣会社・ベルサンテスタッフ(本社・大阪市)の上村佳久さんは「賃金を上げるのはよいが、それだけで保育士は増えない」とみる。年間400〜500の園に約1千人を紹介しているが、「離職理由は仕事量や人間関係がほとんど」。職場環境が定着の鍵を握っている。

■離職者ゼロ

 大阪市東成区の私立保育所「小市保育園」は毎年2、3人の新卒採用を続けているが、ここ3年の離職者はゼロだ。

 各クラスに必ず2人以上の保育士を充て、ベテランと新人を入れる仕組みが有効に機能。保育士3年目の辰巳みのりさん(22)は「先輩のやり方を学べるので安心感がある。これからも保育士を続けていきたい」と笑顔をみせる。

 昨年度ペアを組んだ保育士、藤原寿子さん(37)は「2人一組だと気になった点はすぐに指導できるので育成に効果的」と指摘。私立幼稚園での勤務時代、十分な指導を受けられないまま1人で担任を受け持ち、「負担感が大きかった」と振り返る。

 小市保育園では、平日に全職員約45人のうち1日2人は有給休暇を取れる制度も導入。職場環境改善に取り組んできた小市徳子園長は「離職者が多いと人が育たず、保育の質も向上できない悪循環に陥る」と説く。「本来保育士は子どもの成長を間近で実感できるすてきな仕事なんです」

 保育所自体が職場環境の課題に向き合う姿勢と、解決を後押しする行政の支援がいま求められている。