大阪発 羅針盤

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工科高離れ顕在化 ものづくり産業の危機

2016年5月30日

大阪府教育庁 PT設立、対策急ぐ

府立工科高PT会合に臨む各校長。9校のうち6校が定員割れした(コラージュ)

 大阪府教育庁が府立工科高校の魅力向上と情報発信のプロジェクトチーム(PT)を設立した。今年春の入試で定員割れの学校が相次いだためだ。受験する中学生やその保護者にいかにアピールするか。学校生活の画一的なイメージを見直すだけでなく、卒業後の就職環境を整えることも欠かせない。工科高離れの顕在化は大阪の基幹産業「ものづくり」のありようも問うている。

 「ものづくり現場に人材を送ったのが工科高だ。定員割れが続けば、ものづくり産業の衰退につながる」

 府教育庁の橋本光能教育振興室長は25日のPT初会合でこう呼び掛けた。府立工科高9校のうち6校で受験者数が募集人数に届かなかった現状に対する危機感の表れだった。

■根強い誤解

 PTメンバーの経済界や大学関係者が指摘した主な点は「(工科高の)作業服は“きつい”。デザインが求められる」(近畿大)という学校生活のイメージだった。指摘に対し、定員割れの最も厳しかった布施工科高(東大阪市)の植田篤司校長は「技術を身に付けて就職する『単線的』なイメージを転換できていない」と認めた。

 しかし、定員割れの要因は他にある。売り手市場を背景に大学進学を意識した普通科高志向の高まりに加え、ものづくり現場に対する「3K(きつい、汚い、危険)」の誤解が根強いと植田校長は説く。つまり、就職先のイメージも定員割れに起因しているとの見立てだ。

 工科高の魅力を発信する「入り口」対策よりもむしろ、ものづくり現場に目を向ける「出口」対策を重視する意見はPT内にもある。「『事業継承』がネックだ。(中学生や保護者にとっては)不安材料だ」(池田泉州銀行)という指摘だ。

■乏しい好況感

 事業継承を巡っては、帝国データバンクが近畿圏内企業の後継者実態調査結果を3月に発表している。それによると、後継者不在率が68・7%を占めた。同社は「M&A(合併買収)を選択できる中小企業は一握りに過ぎない。やむを得ず廃業、倒産を余儀なくされる企業も多い」と分析している。

 「アベノミクスはまだ完璧ではなく、中小企業は好況感を味わっていない」「大阪は中小企業のメッカだ。盛り上げていきたい」−。こう説いたのは今月16日に在阪の中小企業経営者と意見交換した自民党国会議員の面々である。ものづくり企業をはじめとする中小企業支援のありようも夏の参院選で論じ合うべきだろう。