大阪発 羅針盤

 地域の取り組みや課題、人々の動きや思いを通して大阪の明日、日本の未来を展望します。

体験型観光と地方創生

2016年6月17日

地域の「宝」見つけ磨く 試される「迎え方」

旧国鉄倉吉線跡地トレッキング。竹やぶが迫る中、線路跡を歩いて目的地へ=鳥取県倉吉市(提供)

 鳥取県は7月3日、大阪市鶴見区で体験型観光の誘客イベントを開催する。「体験」することで、県の魅力をより感じてもらう、新しい“鳥取県の楽しみ方”を提案していく考えだ。では、体験型観光が県にもたらすものとは何か。住民自らが地域の宝を見つけ、磨くことではないか。

 昨年秋に鳥取県西部で行われた「シー・トゥ・サミット」。約240人がカヤック、自転車、ハイク(登山)の3種目で日本海から大山(だいせん)山頂を目指した。

 参加者の中には米国のケネディ駐日大使の姿も。平井伸治知事によると、大使は夜明けの大山に感動されたという。

 県民にとっては当たり前の風景が、県外者には素晴らしいものに映り、一生の思い出となる。

■レトロな町

 鳥取県のイベントは週刊大阪日日新聞社が共催し、三井アウトレットパーク大阪鶴見で行われる。県内市町からも参加があり、それぞれがわが町の観光スポットと体験メニューをアピールする。

 参加自治体の一つ、倉吉市には古い町並みが残る。主人公がタイムスリップする谷口ジロー氏の漫画『遥(はる)かな町へ』の舞台にもなった。経済成長期の開発から取り残されたが、それが幸いし、「レトロな町」として売り出し中だ。

 同市にはかつて国鉄倉吉線が走っていた。1985年に廃線となり、跡地は彫刻公園や遊歩道などになったが、旧関金駅から終点側の一部はレールもそのまま放置された。いま、ローカル鉄道が注目され、各地で町おこしの核にもなっていることを考えると、惜しい話である。

 ところが、この廃線跡が体験メニューのトレッキングの場として、観光商品となる。線路を歩いてもらおう、という趣向だ。

 現地は非日常の世界が広がる。廃線から約30年、竹やぶが迫り、レールとレールの間からも竹が生えている。ひんやりとした空気と静けさの中、参加者は折り返しの山守トンネルを目指す。

 なぜ、こんな仕掛けができたのか。住民が地域の“宝”に気付いたからである。観光施設の誘致に目が向いた時期もあったが、実は足元にあったのだ。

 県内にはまだ見ぬ宝がたくさん眠っているのではないか。

■触れ合いも

 体験型観光の魅力の一つは、自然の中でスポーツやレジャーを楽しむことで、新たな発見があること。

 県東部、岩美町の山陰海岸ジオパークもシーカヤックやクリアカヌーを体験することで、海の上から約6千万年かけて自然がつくり出した海岸美を堪能できる。海の透明度、潮の香りを感じながら、家族で、友達と思いっ切り遊ぶ。

 地域住民との触れ合いも生まれる。地元の「食」を味わうことも重要なキーワードだ。

 一方、そのことは県民の「迎え方」が試されているということでもある。「また、鳥取に来たい」と満足して帰ってもらう。その繰り返しが、“地域を磨く”ことになろう。

 体験型観光をいかに県内に取り込むか。“近くなった”関西に積極的に情報発信する。誘客も自治体、観光団体が一体となって取り組む。地方創生が叫ばれるが、県全体のテーマに位置付けたい。