大阪発 羅針盤

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アベノミクスは果実か失策か 

2016年6月20日

訴え読み解く応用力を 公約の収支バランスは

安倍首相の経済政策を批判する野田前首相=9日、大阪市北区
大阪の有権者に支持を訴える安倍首相=17日、大阪市北区

 22日の参院選公示を前に与野党の大物弁士が来阪した。安倍晋三首相(自民党総裁)は「アベノミクスの“果実”を子育て支援や介護充実に使っていく」と強調。民進党の野田佳彦前首相は社会保障財源の消費税率10%引き上げ先送りを「アベノミクスの“失敗”」と批判した。安倍政権の経済政策は果実を生むのか、失策か−。双方の訴えを読み解くリテラシー(応用力)が必要だ。

 2012年に民主(当時)、自民、公明3党合意に基づく「社会保障と税の一体改革」を主導した野田氏は9日、安倍首相が表明した増税先送りの影響について「年金、医療、介護、子育て支援の大事な分野に穴があく」と指摘。“失敗”と切って捨てたアベノミクスを「トリクルダウン(したたり落ちる)」の言葉を使って演説した。

■コップ酒

 大衆酒場の店員は酒をコップの受け皿にこぼれ落ちるまで注いでくれるが、アベノミクスの場合、酒はコップにたまっても受け皿までこぼれ落ちない。つまり、金融緩和によって円安株高を誘導し、大企業は最高の収益を上げたが、内部留保しただけで中小企業や地方に届いていないという見立てだ。「格差が広がっているのがアベノミクスのからくりだ」と野田氏は続けた。

 17日に演説した安倍首相も負けてはいなかった。47都道府県で有効求人倍率が1倍を超えたと説明し「(民主党政権時代は)8県が1倍を超えただけ」と違いを強調。さらに「(政権奪還後の)3年半で税収を21兆円増やした。安定した経済基盤で成長していく」と語った。

■間違いない

 果たして格差は拡大したのか、あるいは経済基盤は安定したのか。参院選の大阪選挙区に出馬する民進現職は「2012〜16年の正規雇用は23万人減少している」と指摘し、自民新人は「正規雇用は8年ぶりに増加に転じた」と強調した。いずれも日本青年会議所が14日に開いた討論会での発言だったが、司会者のコメントが本質を突いていた。「言う数字に間違いはないんですよ、やっぱり自分らの“都合”のいいところを取るんです」−。

 参院選の公示まであと2日。争点化する経済政策や社会保障制度のありようについて「(選挙公約に)収入をどうするかがほとんど触れられていない。収支バランスを示してほしい」と語ったのは関西経済同友会の鈴木博之代表幹事だ。有権者としてリテラシーを働かせるべきはこの点だろう。