大阪発 羅針盤

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民生委員・児童委員の担い手不足 

2016年11月22日

低い府内の定員充足率 学生による魅力見える化期待

大学生が定年退職の男性向けに作成したPRコンテンツ=大阪市北区

 民生委員・児童委員の担い手が不足している。高齢単独世帯の増加や地域コミュニティーの希薄化に加え、大阪府の場合は生活保護率や児童虐待相談対応件数が全国ワーストの事情も担い手にとっては「負担」となり、府内の定員数(1万3662人)に対する充足率は95.9%と全国で3番目に低い。地域福祉の最前線に位置する民生委員をいかに確保するか。府が試みた対策は、大学生による活動体験を通した「魅力」の見える化だった。

■PRコンテンツ

 「地域で信頼されている」。この夏に体験した大阪府立大、関西学院大、立命館大の学生23人は、大阪市北区で20日に開いた報告会で、見守り活動をはじめ祭りの手伝いもする民生委員を「縁の下の力持ち」と表現。民生委員活動への参加を促すボランティア休暇制度の創設を企業側に呼び掛ける案も示した。

 担い手の裾野を広げるため、府が学生に着目したのには訳がある。「民生委員・児童委員制度の在り方検討部会」の牧里毎治・関西学院大教授は「孫と祖父母の関係を社会に生かすことで民生委員の活動を伝えたい」と話す。つまり、60〜70歳代が大半を占める現在の民生委員にとって孫世代に当たる学生が活動の「伝道師」になれば親世代の年齢層に波及するという見立てだ。

 実際、担い手として男性の比率が低い実態に注目した学生は、定年退職する男性向けのPRコンテンツを発表し「会社員時代のやりがいがよみがえれば楽しい」と提案。学生を受け入れた堺市の民生委員、中辻さつ子さん(69)は「つらいこともあるけど、人との出会いが楽しいこともある」と呼応した。

■方面委員制度

 大阪府はもともと民生委員の前身「方面委員」制度を1918年に始めた経緯がある。当時の林市蔵知事が、夕刊を売る母親と女の子が気になって家庭の状況を調べたところ、夫が病で倒れて、4人の子どもを抱えながら夕刊売りで生計を立てていることが判明。これを機に管内のいくつかの方面(地域)に委員を配置して生活状況の調査・救済の実務に当たったとされる。

 その方面委員制度が創設されて間もなく1世紀−。学生による「魅力」の見える化プロジェクトも全国初の試みであり、植田浩副知事は「今回のモデル事業の成果を踏まえて新たな大学や自治体の参画を得ながら取り組みを強化したい」と語った。地域の福祉力向上を図る大阪モデルの確立が待たれる。

 ミニクリップ

 民生委員・児童委員 民生委員は厚生労働大臣から委嘱された特別職の地方公務員で任期3年、再任可。無報酬のボランティアとして活動し、児童委員を兼ねる。全国統一の制度であり、全市町村で定数が定められている。全国の定数は23万6292人で、充足率は97.9%(2014年度末時点)。