にちにち動物百科

 動物園はワンダーランド。ライオン、キリン、チンパンジー…。大阪市天王寺区にある天王寺動物園は、都会の真ん中でありながら、非日常の世界が広がります。のんびりさんだったり、怒りんぼうだったり。私たちがそうであるように、動物たちも見ているだけでは分からない愛くるしい一面があります。飼育員だから知っている動物たちの性格や食事、クスリと笑えるエピソードも交えて紹介します。

☆5 チンパンジー

2018年8月9日
おやつに凍らせたサトウキビをもらったミツコ。「もらったよ!」と、うれしそうにカメラにアピール
最年長のプテリ。穏やかな性格で、6月の大阪府北部地震の際はおびえる孫のレモンを優しく見守っていた
最年少のレモン。好奇心旺盛の半面、ビビリで警戒心が強い性格

 人間に最も近いとされる動物「チンパンジー」。見た目だけでなく、知能が高いことでも知られています。例えば、絵を描いたり、言葉を理解したり、テレビに出て芸能人と共演したり。でも、彼らだけが特別ではないのです。天王寺動物園(大阪市天王寺区)での暮らしぶりを聞いてみると、共感するところがたくさんありました。

■微妙な関係

 天王寺動物園には6人(頭)のチンパンジーが暮らしています。

 野生のチンパンジーは10〜100頭で群れを形成していますが、同園では4人と2人のグループに分かれています。「本当は数が多いほうがいいのですが、6人の相性もありますから」と、飼育員の仁木美智子さん。どうやら、4人の雌に問題があるそうです。

 まず、4人グループは、雄のリッキー(34歳)がリーダーの通称・リッキー群。ほかは、鼻の下の白い斑点と乳首の白色が目印の雌のミナミ(33歳)、最年長のプテリ(雌、35歳)と最年少のレモン(雌、14歳)。2人は祖母と孫の関係です。

 2人組は、プテリの息子でレモンの父のレックス(25歳)と、ミツコ(雌、30歳)。実は、このミツコがほかの3人の雌とあまり仲が良くないそう。ほかの動物園関係者から「美チンパンジー」と評されるミツコですが、性格は「せっかちで感情的」(仁木さん)と、なかなか飼育員泣かせのようです。

■実は猛獣

 かわいらしい表情としぐさに目がいきますが、チンパンジーは実はどう猛な生き物。

 野生では、群れの中の順位を巡って激しく争い、死に至らしめることも珍しくありません。雄の子殺しも報告されています。ですので、先ほどのミツコとほかのチンパンジーとの関係も楽観できないのです。飼育歴4年目の仁木さんは「相手は猛獣。決して分かった気になったらだめ」と言い切ります。

■じっくり時間掛け

 人間の3歳児ほどの知能を持つといわれているチンパンジー。特に記憶力に優れており、飼育員の顔や言葉も理解しています。

 だから、飼育員が配置換えになると大変。仁木さんいわく「換わった直後は新人がいびられているような感じ」。うんち攻撃は、もはや洗礼。特に雌の当たりが強かったそうですが、そんなときに慰めてくれたのはリッキーだったとか。とにかく時間を掛けて信頼関係を築くのは、人間と同様な気がします。

 また、園関係者でも獣医師にも強く反応します。年に一度の健康診断は戦い。やっぱり、「お医者さんは怖い」ということでしょうか。

 【チンパンジー】霊長目ヒト科チンパンジー属。アフリカ中部の熱帯雨林に生息。野生では果実や樹皮のほか、小動物も捕食する。