金井啓子の現代進行形

大阪府の万博開催の能力は?

2016年11月10日

誘致準備委に課された使命 

 2025年の誘致を目指す大阪万博について、「2025日本万国博覧会誘致準備委員会」が9日に発足した。この万博については本紙のコラムで昨夏にも書いたが、実現に向けて一歩踏み出した今、あらためて触れておきたい。

 高度成長期に開催された1970年の大阪万博は見るもの聞くものがすべて珍しかった。携帯電話の原型やコンピューターなど、新しい科学技術が国民と世界の目を引いた。また世界中のパビリオンがお目見えし、当時の日本人の大半は「世界」「外国」というものに初めて触れたといっても過言ではない。

 一方で、2025年の大阪万博では、交通機関や通信、流通、またインターネットの発展などで世界が狭くなった分、1970年当時のような目新しさを感じることは少ないのではないか。

 また、1970年と2025年の万博とで決定的に違うのは、前者はこれから伸びていく前向きな日本の姿を象徴していたのに対し、後者は万博をきっかけに落ち目の日本をいかに立て直すかという、いわば後ろ向きの姿勢にある点だ。事実、松井一郎大阪府知事が大阪万博の開催を言い出したのも、今ひとつパッとしない大阪経済を発展させる狙いがあり、そのため「全国への波及効果は6・4兆円」という大風呂敷を広げ、安倍晋三首相も地域経済への起爆剤になることを期待している。

 日本や大阪の経済が成長することに異論はない。だが、大切なのは万博期間中だけ一時的に盛り上がるのではなく、景気が継続的に発展することだろう。しかしながら、これまで世界の例を見渡しても、万博をきっかけに開催国の国内経済が持続的に伸びたという例はあまり耳にしない。

 大阪府と大阪市はかつて、大阪湾のベイエリアに一大企業拠点を作るとして土地を整備した。だが、フタをあければ人も企業も集まらず、そのため府も市も莫大(ばくだい)な借金を背負った過去がある。万博も結局、箱モノによって景気を刺激しようという、大阪府や大阪市の昔の発想と大差ない。しかも大阪府は実質収支こそ黒字だが内実は火の車であり、地方債を発行するには総務省の許可が必要な起債許可団体に陥っている。現状を見れば新しい事業を起こす余裕はとてもなく、そのため万博の開催に必要な自治体負担分の経費の大半は起債でまかなうことになるだろう。

 一発逆転のためにばくちで大穴を狙うが、元手は友人からの借金。大阪府がやろうとしていることは、とどのつまりこういうことである。2025年の万博が成功すればまだしも、失敗すれば大阪府の財政は破綻するかもしれない。その危険性を頭に入れた上で、大阪のためになる万博を提案して誘致することが、準備委員会に課された使命である。

 (近畿大学総合社会学部准教授)