金井啓子の現代進行形

景気をばくちに託せるのか

2016年12月8日

カジノ頼みの成長戦略

 カジノの本場といえばラスベガスやマカオを思い浮かべるが、実はその他にもアジアやヨーロッパ、アフリカ、オセアニアなど世界ではその数130以上にのぼる国々でカジノが合法化されている。意外にグローバルかつメジャーな娯楽のようで、その世界的な広がりに釣られてか日本もついにカジノ国家の仲間入りをしそうな気配である。カジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法案(カジノ解禁法案)は6日の衆院本会議で、自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。

 安倍晋三内閣はIRを成長戦略に位置づけている。カジノや娯楽施設で外国人観光客を日本に呼び込み、カジノのほかにも宿泊や食事、お土産などでお金を使ってもらおうという計画だ。

 今でも円安や格安航空(LCC)の増便の効果によって外国人観光客は年々増えている。一部量販店やホテルなどが多くの恩恵を受けていることから見ても、カジノという仕掛けがあればさらに観光客が増える可能性はあると思う。IRは豪華なホテルにショッピングモール、アミューズメントパークなども同居するので雇用も増えるだろう。しかし、なんだか釈然としない。胸がつかえたようにモヤモヤする。

 カジノの推進者は「カジノは全体の一部。IRは老若男女が楽しめる健全な娯楽」と訴えている。だが、マカオやラスベガス、シンガポールにしても全体の収益のかなりの部分をカジノで稼いでいる。カジノの入るホテルが全体に占める割合は少ないとしても、IRの本質はばくち。おそらく私のモヤモヤは、ばくちが経済成長戦略になっているというチグハグ感にある。

 しかも世界的に見てカジノの収益は落ちている。昨年1月には米カジノホテル運営大手シーザーズ・エンターテインメント(ネバダ州)のカジノ運営子会社が経営破たんし、マカオでは2015年のカジノ総収入が前年比34・3%もの大幅減になったと報道されている。

 マカオの場合、原因は中国の景気減速と、習近平国家主席が続けてきた反腐敗闘争で本土の旅客が大きく落ち込んだからだ。マカオにとって最大の顧客は中国人富裕層。これは日本でも同じで、今後の中国の経済の成り行きや国内政治によって富裕層の動きが鈍り、カジノの収益に影響が出ることも考えられる。しかも世界130カ国以上にカジノがあって客は奪い合い。そんな不安定な要素のあるカジノを成長戦略に据えるというのも危なっかしい話ではないか。

 カジノはギャンブル依存症や多重債務者が増える心配も指摘されているが、景気をばくちに託そうとするわが国のいびつな精神はもっと深刻だろう。

 (近畿大学総合社会学部准教授)