金井啓子の現代進行形

研究者つぶしか英断か

2016年12月15日

関西大学が軍事関連研究を禁止

 関西大学は、防衛装備庁が防衛装備品に応用できる研究を公募して資金提供する「安全保障技術研究推進制度」について、学内の研究者が申請することを禁止する方針を決めたという報道を見た。このニュースを見た私には一瞬迷いが生じた。

 まだごく数年前からとはいえ研究者の道に進んだ私は、勤務先の大学の内や外で文系・理系問わず多くの研究者たちと出会い、彼らが極めるべきと信じた分野を突き進もうとする熱意にじかに触れてきた。その道を恣意(しい)的に閉ざしていいのかというのが、迷いの理由のひとつである。でも、その一方で、人を殺すことにつながりうる可能性は少しでもつぶしておくべきであり、それを決めた今回の方針は「英断」だと考える気持ちも強くあった。

 安全保障技術研究推進制度は2015年度に開始されたもので、防衛省では「装備品への適用面から着目される大学、独立行政法人の研究機関や企業等における独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成する」ことを目的としているという。また、「防衛省が行う研究開発フェーズで活用することに加え、デュアルユースとして、委託先を通じて民生分野で活用されることを期待して」もいるとしている。

 そもそも軍事関連の研究においては一般的に、新たな素材の開発や効率的な通信方式など軍事とは直接関係のないものも研究対象とされている。実際に安全保障技術研究推進制度で2016年度に採択された研究課題もそういったものが多く、新型のミサイルや爆弾を研究しているわけではない。軍事関連の研究からは、日本に限らず世界各国で新しい科学技術や高性能な民生品が生まれ人々の生活や社会に多大な貢献をしたことは否めない。たとえば私たちの日常生活に今や欠かせないものとなっているインターネットだって、元はと言えば軍事関連の研究から生まれてきたものなのだ。

 しかしその一方で、軍事関連の研究が兵器や装備の充実に一役買い、結果として戦争の道具になってきたことは無視できない。戦争とはとどのつまり、人を殺すことである。研究者は新素材の開発などの研究に携わっているつもりでも、結果として人殺しに一役買うことになる。

 世界に紛争が絶えないのは悲しい現実である。だからこそ流れを軍縮に持っていかなければならない。そう考えると、人殺しにつながる研究は芽のうちからつぶさなければならないことになる。やはり、関西大学の今般の判断は、研究者がそんな人殺しの“道具”に使われることを高い倫理観から意識し拒否したものであり、英断と断じざるを得ない。

 研究者たちの熱意を肌で日々感じている私としては、人類が平和裏に恒久的に繁栄する方向に向けて、研究者の熱意が損なわれることなく英知が生かされることを願わずにはいられない。

 (近畿大学総合社会学部准教授)