金井啓子の現代進行形

身内の不祥事を報道できるか

2017年1月12日

講談社編集者が逮捕

 東京都文京区の自宅で昨年8月に妻を殺害したとして、警視庁捜査1課は殺人容疑で講談社の青年コミック誌「モーニング」の編集次長を務める朴鐘顕(パクチョンヒョン)容疑者を逮捕したというニュースを読んだ。ただし、この原稿を書いている時点では、本人は容疑を否認しているという。

 当の講談社からは広報室名で逮捕について「このような事態になり大変遺憾です。本人は無実を主張しており、捜査の推移を見守りつつ社として慎重に対処してまいります」というコメントが出された。推定無罪の原則に基づいて考えれば至極まっとうな言葉選びと言えるだろう。

 もっとも、その他のメディアは原則とは無関係。逮捕当日の夜のニュース番組ではトップで報じたり、8月の事件発生以降これまでに撮りためていた容疑者を直撃する映像を流し、あたかも犯人確定かのように報じるテレビ局もあった。また、新聞社も紙面やウェブサイトで大きく扱っていた。おそらくこういったたぐいの事件の例にならって、これから発行される週刊誌でも、親戚や近所の人、知人・友人、警察関係者などへの取材を尽くして、夫婦の関係や2人の人柄、事件の概要を微に入り細にわたり伝えることになるのだろう。

 ところで、ご存じの通り、講談社は『週刊現代』や『フライデー』という週刊誌を発行している。この2誌が今回の事件をどう報じるのかが気になる。いや、そもそも報じるのだろうか。「無罪を主張して」いるため「慎重に対処して」掲載を見送るといったことはないだろうか。両誌ともこういった事案が発生した場合、エグいと思われるほど取材対象に迫った記事を書くことでも知られている。つい先ごろも、フライデーは俳優だった成宮寛貴さんのコカイン吸引疑惑を報じ、それが彼の引退発表のきっかけとなった。ちなみに成宮さんは現時点では同疑惑で逮捕すらされてはいない。こういった報道姿勢を見せている講談社が自社の社員である“身内”には甘いとなってしまえば同社が発行する週刊誌は“ダブルスタンダード”ということになる。

 今回の事件の容疑者と亡くなった妻の間には4人の子どもがいるという。夫婦の年齢から推測してまだ幼い子どももいると思われる。一部報道によると、子どもの証言によって容疑が固まったとも聞く。心に傷を負うような経験をした子どもにとっては、もし仮に父親が無罪であればわずかな希望を与える話にはなるだろう。また、彼らにとって両親の関係を暴くような報道が少ない方が傷は少なくて済むのもわかる。さて、講談社の2誌はどう出るのか。無視か、それともイケイケドンドンか。同社のジャーナリズムに対する姿勢が問われている。

 (近畿大学総合社会学部准教授)