金井啓子の現代進行形

「昭和っぽい」万博?

2017年2月16日

健康から未来へテーマ変更か

 「あなた、昭和っぽいねえ」と友人が笑いながら私に言った後、追い打ちをかけるように「アナログっぽいというか」と続けた。「なんで」と聞いた私の表情がやや不機嫌そうだったのに気づいたのか、友人は「悪い意味じゃないよ」と慌てて言った。ある店で売られていた布製の手作りポーチを買い求めた時のことである。

 私はこういう手作りの小物を買うのが好きなだけでなく、幼い頃から自分でセーターやマフラーを編んだり洋服や袋を縫ったりしてきた。料理も好きだ。近頃は手頃な価格でさまざまな洋服や小物、お総菜やお弁当をどこでも簡単に入手できるが、あえて時間をかけて手を動かすことを好む私の趣味を知っている友人が、「昭和っぽい」と評したのだった。かく言う友人も、プラモデル作りや木工工作を好む。他にも、季節ごとにさまざまな保存食品作りに精を出す友人もいる。

 「昭和っぽい」というのは今回の場合、手間を惜しまないというような、前向きな意味だったのである。だが、私が当初むっとしてしまったのは、「昭和っぽい」という言葉が一般的に「古くさい」「現代の流れについていけていない」というように後ろ向きに使われることが多いからだろう。歳を重ねればやむを得ないことなのかもしれないが、自分の生まれた時代がそんな呼ばれ方をするのは愉快ではない。

 ところで、2025年に開催を目指す大阪万博のテーマが、大阪府が掲げた「人類の健康・長寿への挑戦」から「未来社会をどう生きるか」に修正される可能性が出てきたらしい。経済産業省がまとめた報告書骨子案が報道されたのだ。発展途上国では現時点では「健康・長寿」には程遠く、世界において普遍的なテーマにはなりにくいから、という理由のようだ。報道された骨子案によると、日本での開催意義として「最も高齢化が進み、iPSなどの生命科学の最先端を走る」「東日本大震災と原発事故を経験した日本だからこそ、人類の生命・生活について議論できることがある」という2点を掲げており、これを海外に向けてアピールする考えらしい。

 だが、いま世界を見渡すと、新大統領が誕生した米国は分断が深まっており、欧州も英国の欧州連合(EU)離脱や極右勢力の台頭で混乱の極致にある。そして、中東やアフリカでは多くの難民が発生している。大阪万博が「未来社会」をテーマにするなら、SF映画のような未来の科学技術だけではなく、混乱や分断から調和へと導く人類の英知を示すことができれば、各国から歓迎されるのではないだろうか。

 そう言えば、昭和真っ盛りの1970年に行われた大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だったが、こちらには「調和」が含まれていて現代社会を先取りしていたとも取れる。「昭和っぽい」もあながち捨てたものではないのかもしれない。

 (近畿大学総合社会学部准教授)