金井啓子の現代進行形

いまや敬遠される記者の仕事

2017年4月20日

いまこそ自ら襟を正す必要も

 「今年もまた記者を志望してる子は少ないですよ」と同僚が私に言った。新入生が大半を占める200人を超える学生を相手に、マスメディア全般について教える講義を終えたばかりの彼が教えてくれたのだ。

 私が所属する専攻には、卒業後はマスメディアに関わる仕事をしたいと考えて入学してくる学生が多い。同僚は毎年、講義の冒頭にどういったマスメディア企業に入りたいのかを学生に尋ねているという。今年も、どれか一つに手を挙げるよう求めたところ、放送局が約4割、出版と広告をあわせて3割5分ほどとかなりの部分を占めた。そして、新聞社を尋ねたところ、十数人つまり1割弱が挙手するに過ぎなかったのだという。放送局や出版社を目指す学生の中に報道部門を狙う人もいるだろうが、今までの学生を見ていると少数派だ。

 私が大学に転じた9年前も、記者職の人気は高くなかった。その理由を聞くと、いつでも呼び出しがかかったりしてきつそうというのが主だったと記憶している。だが、近年は他の理由も加わってきた。「人のプライバシーを暴き立て、犠牲者の遺族を囲んで傷をえぐる。横柄であおり立てるように話す」と、とにかく記者のイメージが悪いのだ。私が担当するジャーナリズムに関する講義を取り始めた2年生の中にも、そんな見方を持つ学生がいる。その背景には、テレビやネットでさまざまな映像を見られるようになった昨今、記者が取材対象を取り囲む姿を頻繁に目にしていることがあるように思われる。ドラマに出てくる記者が怪しげにネタを振り回していばっている様子も悪影響を及ぼしているのかもしれない。この点に関しては、イメージ改善のために人気俳優を記者役で起用するドラマを作ってほしいと、半ば本気で思うほどだ。

 ちなみに、学生たちが記者の実態や報道内容をしっかりと把握した上で嫌っているのかというと、そうではない一面もある。取材とは大勢で取り囲むものより一対一で静かに行うものが多いと教えると意外そうな顔をする。報道系の週刊誌を「買って読んで感想を書く」という課題を出せば、「生まれて初めて週刊誌を買った」という学生が「思っていたよりマトモな内容が載っていた」と口にしたりする。ジャーナリズムを知る機会が限られていた彼らに対して伝えるべきことは多いと痛感する。

 記者側にも改めるべき点はある。千葉県の小学生殺害事件を取材していた記者が、民家の壁をけとばした映像が出回った時には、記者のイメージ改善に日々取り組んでいる私は「やらかしてくれた」と頭を抱えた。記者に対する目は、記者自身が想像しているよりずっと厳しいことを意識しなければ、せっかくいい成果を出しても台無しにしてしまう。ジャーナリズムは、報道する側、情報を得る側の双方が育てていくものなのだとあらためて感じている。

 (近畿大学総合社会学部教授)