金井啓子の現代進行形

偽物が横行する社会に必要な目

2017年5月11日

自然には本物あふれているのに

 サクラが散り、木々の緑が濃くなってくる今頃の時期になると、郊外に出向けばキリとフジが咲き乱れている。キリとフジ、共に花びらが紫色なのと花の形状が似ているために、近くに寄るまでは意外に見分けがつきづらい。そこで山間部などへ友人とドライブに行く時には、余興として、先にキリを発見したほうが1ポイント獲得、逆にフジをキリと見間違えると減点というゲームに興じている。私たちは、これを「キリフジ選手権」と呼んでドライブの楽しみにしている。さまざまな花が大好きな私たちにとって、これは季節限定のお遊びである。

 さて、余談はこれぐらいにしておこう。キリやフジ以外にも、似ているようで見分けが難しいものは世の中にたくさんある。たとえば、そうめんと冷や麦、焼き肉とバーベキュー、スパゲティとパスタなど、食べ物だけでも世の中には似ているようで違うものは少なくない。

 もっとも、キリとフジ、そうめんと冷や麦など、これらはいずれも本物であり、偽物との区別を必要とするものではない。ところが世の中には本物と区別がつきにくい偽物があるからやっかいなのだ。

 その典型が詐欺だ。最近は通販大手のアマゾンで詐欺が横行しているという。アマゾンに登録した業者が激安商品を販売。ユーザーがお金を振り込むと商品を送らずに姿を消してしまう。アマゾンでも注意を呼びかけている。私の知り合いも悪徳業者にひっかかってしまったそうだ。お金はどうやら戻りそうだが時間を無駄にしたと非常に腹を立てていた。

 一方、政治の世界を見渡すと、依然として森友学園に関する問題がくすぶっている。5月8日の衆院予算委員会で、森友学園への国有地売却問題をめぐって、学園の前理事長の籠池泰典氏が公表した財務省の田村嘉啓・国有財産審理室長と交渉した際の録音データについて、佐川宣寿理財局長が本物だと認めた。田村室長は、森友学園に貸し付け、その後になって売却した国有地の扱いを「特例」だとしており、森友学園と国との間の取引には事務的な手続き以上のものがあったと、私たちも考えざるを得ない状況になってきた。片や、校舎の建設をめぐっては3通の契約書が存在し、補助金詐欺の疑いも出ていることから、籠池前理事長の言い分を全面的に信頼することもできない。

 これなどは一例で、現実の世の中には本物によく似た偽物がゴマンとある。しかも、それらは詐欺のように私たちに大きな害を与える。大自然の中でのんびりと過ごしながらキリとフジを見分けるゲームはしょせんひまな人間のお遊びだが、世の中の詐欺や欺瞞(ぎまん)、ウソ八百を見破るのはゲーム感覚とはいかないものである。

 (近畿大学総合社会学部教授)