金井啓子の現代進行形

近大生が結んだおおい町との縁

2017年5月25日

きっかけは女優・浜美枝さん

 福井県おおい町と近畿大学が包括連携協定を締結した。そのきっかけとなったのが、近大の総合社会学部で2010年度から4年にわたり客員教授だった女優の浜美枝さんの授業や同町でのフィールドワークであり、その後学生たちが町で活動する農業サークル「近大農園(後に「やまぼうし農園」に改称)」を立ち上げたことだった。

 やまぼうし農園のメンバーが田植えなどを行った今月21日に、町内の古民家で調印の式典が行われた。実は私もフィールドワークや農園に関わっていたため参列したかったのだが、所用のためにかなわなかった。

 だが、式典に立ち会った数人に話を聞くことができた。そのひとり、花立智司さんは今から7年前に総合社会学部に入学した直後に浜さんの授業を受けた。「一つ一つのテーマが面白く、真剣に参加していろいろ知識を得たいと思っていた」という彼は「『浜美枝』という世界にのめりこんでいたのかもしれない」とも語ってくれた。授業の一環でおおい町を訪れた花立さんは、受講を終えた後も浜さんの手伝いなどを通じて同町と深く関わり続け、しばらくして受講仲間と相談して農業サークルを立ち上げた。きっかけとなったのは、同町で農業を営む松井榮治さん一家と出会ったことだった。フィールドワークを手伝ってくれた一家が育てた野菜を収穫させてもらい、採れたての味に感激したことが「自分の手で野菜や稲を作ってみたい」という思いにつながったそうだ。

 花立さんよりも数年後にフィールドワークに参加した神戸出身の渡邊絵梨奈さんは、卒業してまもない今年4月にはなんとおおい町民になっていた。町の「地域おこし協力隊」の一員となったのだ。「おおい町の自然と人の温かさに感動し、いつかこの町に住みたいと思ったから」だという。「大好きなおおい町のことをより多くの人に知ってほしい」と考えて協力隊のメンバーになったのだそうだ。

 「何の後悔もなく幸せ」だと感じている渡邊さんが司会を務めた式典には、現役学生の西川春妃さんも参加していた。西川さんは浜さんの授業もフィールドワークも受けたことがない。それでも、「物作りとかが好きで、農作業も楽しそうだなと思って」やまぼうし農園のメンバーになり、活動を続けている。農作業は楽しいだけでなく大変であることも教えられ、いい活動にめぐり合えたと受け止めているそうだ。

 今回の協定でおおい町と近大は「連携し、双方にとって有益で継続的な取り組みを推進」し、「総合大学の英知を結集し、おおい町の豊かな自然を生かした地方創生に貢献」することを目指したいとしている。つまり、協定締結はゴールではなくスタートなのだ。松井さんが「面白い相乗効果が生まれそう」と期待する気持ちを私も共有しつつ、これからもおおい町に通い続けることになりそうだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)