金井啓子の現代進行形

実務者から学ぶ記者の仕事

2017年6月15日

報道フォーラムに学生も参加

 緑あふれる5月後半の早稲田大学のキャンパス。3人のゼミ生を率いて、2日間にわたって開かれた「報道実務家フォーラム 拡大版」に参加した。会場の大教室に足を踏み入れると、3人のうちの誰かが「わあ、大人ばっかり」と小さくつぶやいたのが聞こえた。

 報道実務家フォーラムは、新聞・通信・放送の記者でつくる「取材報道ディスカッショングループ」の議論の中から生まれた。ウェブサイトを見ると「取材技法を高め、知識を広げたり、情報、報道の自由と記者の権利について理解を深めたりすることを目的」として2010年に始まったと書かれていた。「現役の記者や記者を目指す人、そういったテーマに関心のある人ならどなたでも参加できます」ともあったため、てっきり学生たちが多数来ているのだろうと思っていたから、私の教え子にも声をかけた。今年の3年ゼミの学生は今までより記者志望者が多い。そのうち都合のつく3人が参加したのだった。

 だが、参加者のほとんどが現役の記者という予想外の環境の中で、緊張しながら3人が臨んだフォーラム。2日間で合計八つの講座が並び、その内容は、情報公開法の活用方法から、警察取材、福島を取材するにあたっての留意事項、富山市議会の政務活動費問題、東芝の粉飾決算、エクセルを用いたデータの処理方法、現役記者の海外留学、SNSを活用した調査報道に至るまで、実に多種多様だった。

 すべての講座を受け終えた学生のひとりから、「私はいま学生としてジャーナリズムを学んでいるけれど、記者として学ぶこととの違いを感じた」という感想が漏れた。活発に出された質問は現役の記者からばかりだったのだが、その中で果敢にも手を挙げて質問した学生もいた。講演者からいい答えを引き出していて、私までなんだか誇らしくなった。また、もうひとりの学生は「今まで持っていた記者のイメージが変わった」と話した。

 彼らが所属する3年ゼミでは今、自分が将来就きたい、もしくは興味を持っている職業に就いている人を取材して記事を書く課題に取り組んでいる。今回のフォーラムでの経験はそれに役立つだろうと思い、大阪に戻った後にみんなの前で3人に話してもらった。すると、他の学生から「自分の取材に生かせる話を聞けた」「やはり今回のフォーラムに足を運ぶべきだったと思った。次にこういう機会があればぜひ自分の足で行ってみたい」という声が出た。

 記者を目指していても、学生がその姿に直接触れる機会は少ない。今回は「記者というのは地道な取材をしているのだ」という新しい発見もあったらしい。そんな現実を知った上で、記者に憧れる気持ちを強めることができたのであれば、わざわざ大阪から新幹線や夜行バスでお金や時間や体力を費やして東京へ往復したことも無駄ではなかったと言えるのだろう。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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