金井啓子の現代進行形

“クレーム処理”を誤った政府

2017年7月13日

国民は“顧客”という意識を

 今週10日は安倍首相にとって重要な日だったはずだ。友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、衆院文部科学、内閣両委員会合同の閉会中審査に前川喜平前文科事務次官が参考人として呼ばれた。一方、大阪府議会本会議では、昭恵夫人が新設小学校の名誉校長を務めていた「森友学園」の籠池泰典前理事長が、同じく参考人として招致された。だが、当の首相は外遊のため不在。しかもこれだけ重大な2件が同じ日に行われると、わざとぶつけてマスコミの扱いを分散させようとしたのかと下衆の勘繰りまでしたくなる。

 “主役”が表舞台に現れないのは首相だけではない。昭恵夫人の様子は時折講演などでの模様が聞こえる程度だし、首相の友人である加計孝太郎理事長に至っては肉声はおろか動向すら伝わってこない。これではなんだか納得がいかないし、もっと説明してほしいと思うのは私だけではないはずだ。

 そんな気持ちが内閣支持率にも如実に表れている。新聞やテレビ局各社の最新の世論調査では、安倍内閣の支持率は急落して30%台前半に落ち込んでいる。参考人招致の直前の数字ではあるが、その後であっても大きな違いはないだろうし、むしろさらに下がっているかもしれない。

 それはそうだ。自分の国を“経営”してくれる政治家たちを選挙によって送り出し、税金という“使用料”を支払って支えている“顧客”である国民にとって、サービスの内容に不明瞭な点があるからとクレームをつけて、説明をして対応してほしいと強く望んでもかなわないのならば、別の人に代わってほしいと願ってもおかしくない。

 ところで、数日前に信州に行って来た。鹿教湯温泉にあるホテルに泊まったのだが、暑い日だったにもかかわらず部屋のエアコンの効きが悪くて往生した。いわゆる“クレーマー”のように理不尽にうるさく文句を言ったわけではないのだが、すぐにエアコンの様子を確認した上で、混み合っていたにもかかわらず部屋を替えてくれた。さらに、従業員たちの応対はこちらが恐縮するほど丁寧で、翌日にホテルをたつ頃にはそんな不具合があったことは忘れているほど滞在を楽しんだ。

 ホテル経営に詳しい友人に後から尋ねると、そういった対応は基本中の基本らしい。そのホテルはお風呂、食べ物、身体が不自由な人への対応などもよかったのだが、こういったクレームに対して顧客の気持ちをおもんぱかりながら対応するというサービスに触れて、ぜひもう一度行こうという気持ちになった。

 民間と行政のやり方はもちろん違うところも多い。それでも、“顧客”の満足度を第一に考えるべきという点では同じだ。安倍政権は小手先の内閣改造でお茶を濁すのではなく、顧客が求めている対応を取っていくことで国を預かっている責任を果たすべきではないだろうか。

 (近畿大学総合社会学部教授)