金井啓子の現代進行形

歩きスマホするほど忙しいの?

2017年8月3日

観光都市・大阪市も禁止条例を

 歩きながらスマートフォンの画面を食い入るように見る「歩きスマホ」は日本の社会でも物議を醸すことがあるが、米ハワイ州ホノルル市では歩きスマホに罰金を科す条例を制定したという。緊急時と救急隊員らは免除されるが、10月25日から施行される。

 この条例は道路を横断する際にゲームやデータ通信の使用を禁止するもので、これはスマホには限らず、パソコンやデジカメも含まれる。違反すれば、初回なら日本円で約1650〜3850円、繰り返すと3回目には1万円前後の罰金が課せられる。かなり厳しいペナルティーだ。

 ホノルル市長によれば、歩行者が横断歩道でクルマにはねられる事故が多発していることが背景にあるという。罰金より命が大事。また、観光地として歩きスマホが多発する都市というのも不名誉な話である。ホノルル市にとっては背に腹は代えられない苦渋の決断だったのだろう。

 歩きスマホは欧米でも見られる現象だ。私は今年、米国のワシントンDCとドイツのボンを訪問したが、やはり歩きスマホで道路を横断する人たちを多く目撃した。どうにも危なっかしいが、実際、段差につまずいて転ぶ人もいた。

 一方、冒頭にも書いたように、日本でもサラリーマンや学生が、また最近は年配者まで歩きながらスマホに夢中になる姿を毎日のように目にする。こちらが近づくまで気がつかない人が多いことから、いずれ歩行者や自転車、クルマと衝突する可能性はホノルル同様に高いだろう。衝突される側にとっては「もらい事故」のようなものであり迷惑な話だ。

 まきを背負って歩きながら読書に熱中した二宮尊徳は、なんとか勉強する時間をひねり出したいという強い気持ちがあったのだろう。一方で、現代の歩きスマホ族は、歩いているその瞬間にどうしてもスマホを見ていなければならないという差し迫った事情を抱えているわけではなさそうだし、ニュースを読んだり勉強に集中しているわけでもないようだ。SNSでの友だちとの会話が盛り上がったり、ネットゲームで得点を上げるのに夢中になって、つい歩きスマホをしてしまいがちだ。だが、そんなことなら自宅や電車の中、喫茶店でもできるし、事故に遭ったり人やクルマと衝突するといった代償はあまりに大きい。

 外国人観光客が増加中の大阪市は国際的な観光都市になりつつある。2025年万博の誘致にも手を挙げている。だったら大阪もホノルルにならい、歩きスマホ禁止条例を制定すればどうか。御堂筋では歩きたばこを禁止する条例も制定されている。歩きスマホ禁止条例ができないことはない。かつては「汚い」「危ない」「怖い」などと外国メディアからもたたかれた大阪だが、安心して歩き回れる居心地のいい街になりたいものである。

 (近畿大学総合社会学部教授)