金井啓子の現代進行形

茶髪は黒髪より劣るのか?

2017年11月2日

校則は時代に応じ臨機応変に

 大阪府羽曳野市の府立懐風館高校が同校3年の女子生徒に髪の毛を黒く染めるように“指導”し、これが精神的な苦痛となって女子生徒が不登校になり、生徒側が損害賠償を求めて提訴する問題が発覚した。

 報道によると、女子生徒の髪の毛は生まれつき茶色で、そのことは入学当初から家族が学校側に伝えていた。だが、教諭は「母子家庭だから茶髪にしているのか」などと中傷。あげくは、茶髪を理由に文化祭や修学旅行に参加させず、「黒染めしないなら学校に来る必要はない」と“指導”し、それ以降、女子生徒は登校していないという。なお、懐風館高校は生徒の代理人弁護士に「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせることになる」と説明したそうだ。

 そもそも「校則」とは何なのか。一般的には入学や退学、あるいは家庭と学校との連絡や処分などの事務的な手続きを定めている他、生徒に服装や髪形など校内の秩序を守らせるためのルールである。

 学校でも会社でも、あるいは社会全般においても一定の秩序が必要なのは言うまでもない。私が大学で担当する授業でも、理由なき遅刻や度が過ぎた私語、また他の学生が不快に感じる言動などは禁じている。授業の進行が滞ったり他の学生に迷惑がかかるからだ。懐風館高校だけでなく、全国の中学や高校が校則を定めるのは間違っていない。

 ただし、校則といえども絶対的なものではないだろう。戦時中の旧制中学の校則が現在にも通用するわけではないように、何が校則違反か、何が校内の秩序を乱すかはその時代の社会規範や人権意識などによって変化する。

 懐風館高校では古式ゆかしく「日本人は黒髪」という考え方を持っているようだが、果たして現実と合致しているのか。そもそも髪質は遺伝や食生活などさまざまな要因によって変わるもので、すべての日本人が黒髪なのではない。「黒髪は美しい」といった美の観念も時代によって変わっていく。ましてや、この女子生徒は生まれつき茶髪なのだから、それを「染めろ」と迫るのは、先天性の視覚障害者に「黒板の文字が読めるように眼を治せ」と言っているに等しいくらい無知か傲慢(ごうまん)か、恥知らずのいずれかである。

 私の教え子たちの中には「高校時代には絶対に戻りたくないし、何の愛着もない。卒業以来一度も遊びに行っていないし、これからも行かない」と言い切る人もいる。彼の母校は懐風館高校ではないが、度を越した厳しさの校則を教員に厳格に守らされる日々があまりにつらかったからだという。そういった教員たちはあまりに世間知らずと言っていいだろう。時代の寸法に合わない校則や指導があることくらい、いい大人なら知っておいてほしい。指導や教育が必要なのは生徒ではなく、教員や大人の方だろうと言いたくなる今回の問題だった。

 (近畿大学総合社会学部教授)