金井啓子の現代進行形

政治家や要人のウソにご用心

2017年11月9日

総選挙ファクトチェック終わる

 当コラムで先月紹介したファクトチェックは言説や情報の真偽を検証する活動である。各国で多くのファクトチェック団体が活動しており、米仏韓の大統領選挙では活発に実施された。

 一方で、日本初のファクトチェックのプロジェクトが先月の総選挙で行われた。ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が中心となり、四つのメディアが参加したプロジェクトの報告会が先週開かれた。

 四つのメディアとは、「BuzzFeed Japan」「GoHoo」「Japan In―depth」「ニュースのタネ」である。どれも既存の大手メディアではなく小規模な団体だ。日本では大手メディアによるファクトチェックが一部でしか行われていないことについて、大手メディアではインターネットへの注目度がまだ低いことや、危機感が弱いこと、意思決定に手間や時間がかかり過ぎることが、報告会で指摘された。大手メディアには「この政治家がこの発言をしたことはきちんと確認できている。つまりファクトチェックは行えているのだ」と唱える人もいるらしい。だが、そうではなく、発言そのものが事実に基づいているのかという一歩進めた検証がファクトチェックなのだ。

 約60人の聴衆には大手メディアの関係者が目立ったが、中には高校生や赤ちゃんを連れた女性の姿もあった。実際、今回のファクトチェックには四つのメディアで働くプロの記者だけでなく、ジャーナリズムではない仕事をしている人や主婦、学生なども参加した。

 結果的に合計22本のファクトチェック記事が期間中に出され、各メディアのサイトに掲載された。FIJは国際的なファクトチェックのルールに倣うガイドラインを設けており、評価委員がガイドラインに一定程度準拠していると判断すると、FIJのサイトにも記事が掲載される。この評価作業に対して、各メディアから「公平性を保つには第三者の目が必要」「危ういものが出る可能性を防げる」「通信簿みたいで面白い」という声が出る一方で、評価はあまりせず自由な参加を促した方がよいという意見も出された。

 ファクトチェック記事には「不正確」「うそ」などのレーティングがつけられるのだが、適切なレーティングをつける難しさを痛感したという声は複数のメディアから出た。また、選挙期間中に政治家の言葉を「不正確」「うそ」と判断して公表すると、選挙妨害と受け取られないか悩んだという意見もあった。

 そんな難しさも満載の今回のプロジェクトだったが、報告会の聴衆からは肯定的な意見が相次いだ。「これからも続けてほしいし自分も加わりたい」「自分の選挙区の候補者のファクトチェックが必要」といった声である。

 今後さらにファクトチェックに対する認知度が国内で上がり、政治家が自分の発言により慎重になる時代を目指していきたいものだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)