金井啓子の現代進行形

旅には地方紙がオススメ

2017年11月23日

地元の小さなニュース満載

 旅は私の大切な趣味のひとつで、その多くが週末の小旅行だ。日常と異なる食べ物や風景も新鮮だが、それと同じくらい私が楽しみにしているのが、訪れる先で発行されている新聞を宿のロビーや駅で目にすることだ。大阪では本紙大阪日日新聞の他には全国紙しか手に入らないが、各都道府県にはそれぞれ地方紙があり、土地によっては全国紙より地方紙の方が存在感が大きかったりする。

 私が大学で担当するジャーナリズムの授業では、紙の新聞にほとんど触れたことがない学生が多い。いまやインターネットで得られる情報は膨大だし、紙の新聞に載っている情報も相当な部分がネットにも掲載されている。それでも紙から情報を得る方法が今も生き残っている以上、メディアについて学ぶ学生には新聞を手に取ってほしいと考え、あえて紙の新聞を読む時間を設けている。

 今年もそんな授業を行った。例年は大阪近辺で入手しやすい本紙や全国紙のみだったのだが、今回は知人や親戚に依頼して関東甲信越、四国、九州の地方紙も送ってもらい、学生たちに読ませた。すると、彼らから地方紙について「今まで触れることがあまりなかったから新鮮」「地元の人からすると自分の住んでいるところがたくさん取り上げられており、親近感が湧く新聞だと思った」「地元愛を感じた」「目を通すことがなかったため、面白さに気づけていなかった。これから目にする機会があれば、積極的に手に取ることにする」といった声が出た。

 ところで、私のゼミを巣立った卒業生の中にも地方紙で働く人たちがいる。石川県出身の男性は地元に帰って北國新聞の記者になり、能登半島の先端にある町で実に幅広いネタを毎日追っているらしい。長年住んでいた京都を離れて栃木県に移り住んだ女性は、下野新聞の記者として本社がある宇都宮でおいしいものを食べさせてくれるお店の情報を取材して書いた記事が載った新聞を送ってくれた。

 そして、四国新聞で写真記者をしているもうひとりの卒業生の男性には、私の出張先の高松で数日前に会ってきた。私が会った日は、翌日に香川県を訪問する皇太子ご夫妻を撮影するための準備で忙しそうだったが、その前日に県内で行われたゴルフ大会の優勝者のガッツポーズを収めた自分の写真が紙面に載っているとうれしそうに教えてくれた。2年半前の入社時にはほとんど土地勘がなかった大阪出身の彼が、今では自分で車を駆って香川県の隅から隅まで動き回り、いい光景を見つけ次第シャッターを切っているらしい。

 私たちの日常生活の中ではさまざまな出来事が絶えず身の回りで起きているが、中には気づかずに通り過ぎているものもある。そういった小さなニュースに目を向けて丹念に拾い上げて報道してくれている地方紙の記者たちに感謝しつつ、次の旅先での新聞との出会いを楽しみにしているところだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)