金井啓子の現代進行形

世相を斬って笑う漫才は異端か

2017年12月21日

体制批判のトゲは昔から

 面白い漫才コンビがあったものだ。共に30代後半の村本大輔と中川パラダイスが組む「ウーマンラッシュアワー」というコンビである。

 このコンビの漫才をつい数日前にテレビで見た。驚き、そして涙が出るほど大笑いした。自身が所属する吉本興業やテレビ局を皮肉り、原発や小池百合子都知事、沖縄の米軍基地問題、日米関係などを斬って捨てていた。いわゆる風刺ネタなのだが、これが視聴者から拍手喝采を浴びる一方で、逆に反発を受けたりもして、ツイッターやフェイスブックなどのインターネット上では賛否両論の議論が沸騰している。

 当たり前の話だが、漫才というのは客を笑わせることが最大の目的であって、教訓を垂れるためのものではない。そのためどの漫才師も、何をネタにしてどう笑わせるかに苦労する。ウーマンラッシュアワーも時事問題をネタにして笑いを誘っているが、目的が客を笑わせることにあるのは変わらない。

 彼らの漫才がウケたのは、難しい政治や時事問題を面白おかしくお笑いへと転換したことと、どのお笑い芸人もやらなかったことをやったことへの驚きがあるのだろう。その背景には、テレビをはじめとして、お笑いタレントや芸能人が安倍晋三政権など日本の政治状況を批判しにくい雰囲気があるのだろう。政治や社会に対する不満が国民の間にたまっているのだと感じる。

 最近、ある著名なお笑いタレントたちが安倍首相と共に都内で焼き肉を食べたことがニュースになっていた。このタレントたちにしてみれば、一国の首相と会食できることは名誉やステータスと受け止めているのかもしれない。だが、テレビで影響力のあるタレントが時の権力者と近づきすぎると政治に利用されてしまうという批判も、一部からは受けていた。

 もしかするとタレントも、首相と仲良くするほうがメリットがあるとソロバンをはじいているのかもしれない。逆にテレビなどで政権を批判すると、自民党や内閣からテレビ局にクレームが来ることは報道番組に携わる者なら知っていることであって、お笑い芸人であっても政権や政治を批判すればクレームが「絶対に来ない」とは言い切れない。

 だが、そもそもお笑いや芸能は昔から体制批判のトゲを潜ませていたものだ。チャプリンの映画『独裁者』はその典型だし、江戸時代の落語でも権力者である侍を風刺する、たとえば『目黒のサンマ』のようなネタはたくさんあった。

 漫才や落語、風刺画といったお笑いにはジャーナリズム的な要素がある。ならば、ウーマンラッシュアワーの漫才は本来、とっぴでも異端でもないといえる。とっぴと思えるのは、今の社会がゆがんでいるからなのかもしれない。

 (近畿大学総合社会学部教授)