金井啓子の現代進行形

冬用タイヤで憂いを減らす

2018年1月18日

高速道路会社もタイヤの知識を

 「備えあれば憂いなし」というのは、いつの時代にも当てはまる。病気やケガに備えた保険もそうだし、例えば巨大地震に備えて家具が動かないようにしたり、防災グッズを用意することもそうだろう。「いつ来るかわからないものに準備なんかできるか」と考えがちだが、災害はいつ来るかわからないから怖いのだし、だからこそ日ごろの準備が必要といえる。

 ところで、今年の冬はいつもにも増して寒いと感じる。実際に各地で大雪も降っている。そこで私のクルマも、雪や道路の凍結に備えて昨年末冬用タイヤに交換した。といっても、新しく買ったのは夏でも冬でも使えるのがウリの「オールシーズン・タイヤ」である。もちろん冬用タイヤ制限が敷かれた高速道路でも走れる。

 ただ先日、このタイヤのことで嫌な目に遭った。それは京都府の某所に出かけるため京都縦貫自動車道を走ったときのことだ。この日の近畿地方は雪に見舞われ、京都北部でも雪が降っていた。そのため京都縦貫道では一部区間で冬用タイヤの制限が出され、あるサービスエリアで係員が自動車のタイヤを点検し、ノーマルタイヤなら一般道へ出るように指導していた。

 さて、私が乗るクルマのタイヤを見た係員は「ノーマルタイヤですね。このまま高速道路は走れません」ときた。不審に思った私は「タイヤをよく見てください。冬用タイヤの機能も備えた夏冬兼用タイヤで、そのためのマークも付いています」と訴えた。慌てた係員は再確認。「あっ、そうですね。では、どうぞ」と言って通してくれた。私は少し文句を言ったものの、今ひとつふに落ちないままその場を去った。

 高速道路運営会社は事故を防ぐために雪の多い区間ではタイヤ制限を行い、係員を配置して点検しているのだろうが、それにしては不勉強ではないか。クルマのプロであるならば、最新のタイヤには冬用タイヤの機能を併せ持つオールシーズン・タイヤがあることくらい現場に周知徹底してもらいたいものだ。

 一方、不勉強なのは一部の高速道路運営会社だけではない。都会のドライバーも雪や凍結に対する警戒心が薄く、その怖さを知らなすぎる。その原因は、東京や大阪はあまり大雪が降らない上に温度が大きく下がることも少ないためで、一年中ノーマルタイヤで走り続けるドライバーが多いのが現状だ。

 ところが何年間に一度、大雪が降ると都会の道路網は大混乱。あちこちで雪や凍結にまつわるスリップ事故などが起こるのは「ここはあまり雪は降らない。ノーマルタイヤで大丈夫」という油断があるからだろう。また、先日のサービスエリアでは、タイヤチェーンを持っていながらタイヤへの装着方法がわからず往生しているドライバーも見かけた。

 少しでも「憂い」を減らすための「備え」はし過ぎることはないのである。

 (近畿大学総合社会学部教授)