金井啓子の現代進行形

五輪は「選手ありき」の運営を

2018年2月15日

北朝鮮の明るい明日は見えたか

 平昌冬季五輪が行われている。この原稿を書いている時点で、日本選手団では平野歩夢選手ら4人がメダルを獲得しているが、閉会式までにはメダルがもっと増えているかもしれない。各競技における技術の高さもすばらしいが、現場や遠く離れたところで見ているファンの応援を受けて、私などには計り知れない心理的なプレッシャーを感じてもなお、高い水準の競技を披露できる精神的な力強さには驚嘆するばかりである。

 さて、今回の五輪で、競技内容以外に気になることが2点ある。一つめは北朝鮮による五輪への関わり、そしてもう一つが厳しい気象条件である。

 朝鮮労働党の金正恩(キムジョンウン)委員長の妹である金与正(キムヨジョン)第一副部長が、開会式で韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と握手を交わし、アイスホッケー女子では南北合同チーム「コリア」が出場した。北朝鮮から漏れ伝わってくる一般国民の生活の凄惨(せいさん)さと比較すると、金与正氏や北朝鮮応援団がまとう華やかな雰囲気には、同じ国の人々であるという現実味が感じられない。

 また、合同チーム結成の報を聞いた韓国民の間での人気の低さや、韓国の若者たちの間で南北統一を望む声があまり強くないということも報道されている。閉鎖された北朝鮮国内で日々の生活にいま苦しんでいる人々に明るい明日が開けるのはいつになるのかと、やや暗たんたる気持ちにもなっているところだ。

 もう1点気になると書いたのが、五輪会場の過酷な気象条件である。たとえばスキー競技が行われた際には、非常に強い風、低い気温について、8度目の五輪出場でベテラン中のベテランであるスキージャンプの葛西紀明選手が「こんなの中止でしょう、と心の隅で文句を言いながら寒さに耐えていた」という。

 予想外の動きを見せる自然が相手とはいえ、もう少し十分な事前予想を立てて準備をすることができなかったのだろうか。また、放映権収入の関係で夜間に競技を行って米国の視聴者が見やすくなるようにしているといった報道も目にするが、主役であるはずの選手たちの競技内容や安全よりも優先すべきことなのか疑問を抱かずにいられない。

 冬季五輪の競技の性質上、ある程度の寒さは必要である。だが、選手たちあっての五輪である。2022年冬季五輪が行われる北京にはより万全の体制を敷いてもらいたいし、2026年の開催地として名乗りを上げている札幌にも「選手ありき」の運営を望みたい。

 ところで、つらいのは寒さだけでなく暑さも同じである。2年後には東京で夏季五輪が開催される。東京の夏の暑さはただ外を歩くだけでもこたえるし、熱中症患者のニュースは毎日のように報道される。その炎天下で、体力の限界まで自分を追い込んで競技に臨む選手たち、長時間にわたって応援する人たちの安全はどうなるのか。極寒の平昌を眺めながら灼熱(しゃくねつ)の東京が心配でならない。

 (近畿大学総合社会学部教授)