金井啓子の現代進行形

似合う服装で就活に出かけたい

2018年5月17日

周囲に合わせすぎず快適さを

 大学4年生の就職活動がピークを迎えている。3年生の頃は毎回ほぼ全員がにぎやかに集まっていたゼミも、4年生になると欠席者が目立つ。あたかも「大学の授業は休むもの」という前提で面接や筆記試験の日程を決める企業に対しては、腹立たしい思いが強い。卒業見込みの証明書を提出するように求められたと学生から聞くと、「大学には行かなくてもいいと思っているようなのに、卒業はしておいてほしいのか」と皮肉交じりに思ったりもする。

 さて、その就職活動でほとんどの学生たちが着ている、いわゆるリクルートスーツのことである。

 「先生、リクルートスーツは黒じゃなくて紺でもいいと思いますか」と、就職活動を始める前の学生に聞かれた時、一瞬何を尋ねられているのかよくわからなかった。喪服ならば黒というのが相場だが、リクルートスーツの場合、よく似ている黒と紺のどちらを着るかということに、何らかの違いや意味合いが生じるということがよく理解できなかったのだ。

 だが、近頃は黒のリクルートスーツを着る学生が圧倒的に多いのだとか。ちなみに、その学生は紺のスーツを着たいという気持ちを強く持っていた。そこで、黒か紺かという選択で迷わねばならない現状に私は戸惑いつつ、自分が心地よい状態でいることを優先させればいいと思うと答えた。周囲と異なるために目立つ居心地の悪さ、自分が好きな色を着られない不満足な気持ち、そのどちらを重要視するかは人それぞれだと考えたからである。実際に就職活動が始まってみると、紺を着ている人が目立って仕方ないほど黒一色に試験会場は塗りつぶされているのだと、何人かの学生から耳にした。

 ある女子学生からは、みんなが身に着けている形のブラウスが自分にはどうにも似合わなくて困るという愚痴がこぼれた。襟のあたりが問題らしく、最近は自分に似合う形のものを着始めたが、他人と違う服装でも大丈夫なのか恐る恐るといった心境らしい。また、髪形もゴムとピンでひっつめたような形にしている女子がほとんどだが、なんとなく不自然であるだけでなく、顔の輪郭によっては似合わない人もいる。はたちを過ぎたばかりという若さを持つ年代は、極端に言えばどんな装いをしていても美しさがにじみ出る。にもかかわらず、あの姿。見るたびにため息が出てしまう。私の主観に過ぎないと言えばそれまでだが、なんとかならないものか。

 企業に提出するエントリーシートを何枚も書き、夜行バスで東京と大阪を何度も往復しても、なかなか結果が出ず、疲労がたまりつつある学生たち。彼らを見ていると、もう少し心地よいものを身に着け、自分を美しく見せて満足できる姿で、この生活を送れないものだろうかとつくづく思ってしまうのだ。(近畿大学総合社会学部教授)