金井啓子の現代進行形

カジノ誘致の賛否は住民意思で

2018年6月14日

都構想の住民投票は延期に決定

 この秋にも予定されていた大阪都構想の賛否を求める住民投票が、延期されることが決まった。言うまでもなく大阪都構想とは、政令市である大阪市をつぶして、その代わりに東京都のように特別区を設置するものであって、大阪府に権限と予算を集中させる都市制度改革である。

 しかしながら、都構想は2015年5月17日の住民投票で否決された。この住民投票は法律に基づいており法的な拘束力を持つ。ところが、同年11月に開かれた大阪ダブル選挙で維新が勝利したことで住民投票の再実施が決まった。大阪府の北部に住んでいる部外者の私にすれば、いまだに「住民投票だ、都構想だ」と騒いでいることにあきれてしまう。

 都構想の賛否をめぐる住民投票は、ひとつの重要政策をYESかNOかで二者択一する、いわば“究極の民主主義”だった。かたや大阪ダブル選挙は、複数の政策を公約に掲げた何人かの候補者を首長に選ぶ選挙だったのである。同じ選挙でも、両者は明らかに次元と性質が全く異なる。それなのにダブル選挙の結果で究極なはずの民主主義の結果をひっくり返すとすれば、この国が掲げる民主主義は究極どころか、羽よりも軽いことになってしまう。

 さて、都構想の住民投票よりも、絶対にやってもらいたい住民投票がある。それは、カジノ誘致の賛否を問う住民投票だ。

 ご承知のように、早ければ今国会で統合型リゾート(IR)実施法案が可決され、日本にも本格的なカジノが誕生することになる。推進派は観光にも国や地方の財政にも貢献すると主張しており、反対派はギャンブル依存症が増えてしまうと訴えている。法案を審議する国会は、ギャンブル依存症対策として日本人の入場制限を設けて万全の備えでいるが、それでも決定的な何かが欠けている。カジノを誘致する地元住民の意思である。

 大阪を含めてカジノを誘致したい自治体は、まずは議会の同意が必要である。国からカジノ開催の認可が出ると、議会が同意すればカジノを開くことができる。成功すれば地元経済の発展に寄与する。その一方で、会場や交通機関など一部のインフラ整備は自治体に負担が重くのしかかり、もし失敗すれば大借金を背負うことになる。もちろん、ギャンブル依存の患者が増えることも懸念される。

 カジノは地元の住民生活に影響するものだ。その影響は都構想にも匹敵する。だからこそ住民投票が必要なのだ。

 この住民投票は条例を制定するだけで可能だろう。大阪府・市の両議会も都構想の住民投票の議論をする時間と予算、マンパワーがあれば、こちらの議論にも前向きになり、少しは羽よりも重い民主主義の姿を見せてもらいたいものである。

 (近畿大学総合社会学部教授)