金井啓子の現代進行形

観光だって立派な支援

2018年9月20日

被災地は復興への道半ば

 私のジャーナリズムの講義では例年、ネット版ではなく紙の新聞を読む日がある。全国紙やスポーツ紙だけでなく地方紙も用意する。学生が読み比べて違いや共通点に気づくのが狙いである。

 地方紙は親戚や知人、地方紙勤務の教え子に送ってもらっていたが、北海道新聞を取り寄せたことはなく、今年は北海道にいる友人に頼んでみようと考えていた。

 ただ、その依頼をしないうちに今月6日、北海道胆振東部地震が発生した。幸い、友人自身や自宅に被害はなく、発生当日から信号が消えた道路を車で出勤したそうだ。だが、自宅の停電は40時間に及び、周囲の店が品不足となる事態にも遭遇したという。それでも、彼女の場合はかなり早く元の生活に戻れているようだった。

 さて、各地の知人に新聞送付を依頼する時期を迎え、こんな時に北海道の人に頼むのは非常識ではないかとためらった。だが、迷った末に「ダメモト」で頼んでみることにした。

 すると友人は迷いなく承諾し、北海道新聞を購読する同僚から数日分の古新聞をもらって送ってくれた。発送したのが地震発生から8日後、大阪に届いたのはその2日後だった。あまりの速さに驚くと同時に、北海道と言えば生活の多くが地震に影響されているという私のイメージが崩れた。まだ余震は多いし、すべてが元通りとは言えないが、災害の持つイメージに引きずられ過ぎることには気をつけねばと思った瞬間だった。つい最近、卒業前のゼミ旅行の行き先として北海道が挙がった際に「いま行けるのかな」という声がゼミ生から出たが、ついそういう考え方をしがちなのだろう。

 ところで、今月初めに私は瀬戸内海の岩城島の宿に1泊した。海や島を見渡す美しい風景、気持ち良い温泉、地元の食材を生かすシェフの腕にほれ込み、3度めの訪問だった。

 ところが行ってびっくり、これまでの2回はかなりにぎわっていた宿が、広い庭や施設内に客は私と友人の2人だけ。実は、7月初めの西日本豪雨の影響で断水が岩城島で発生し、その影響でこの宿も数週間は休業せざるを得なかったらしい。ただ、私が訪ねた時はすべてが元通りになっていた。それなのに夏の終わりの週末であるにもかかわらず、これほど客が少ないのは豪雨災害のイメージが少なからず影響したからだろう。

 そういえば、私が去年美しい川で泳いだ和歌山県の川湯温泉も、8月の台風20号で一帯が浸水被害を受けた。ようやくいくつかの宿が営業再開だと聞いたので、昨年泊まった宿がいつ再開できるのかを確認してできるだけ早く訪れたい。

 ボランティアや募金も復興支援のひとつだが、立ち直った被災地やその周辺を訪れて遊んだりお金を使うことだって、大切な支援のひとつである。各地を訪ねて遊び歩くことが大好きな私。それが災害復興に役立つのなら、これほどうれしいことはない。(近畿大学総合社会学部教授)