金井啓子の現代進行形

あおり運転ゼロにする判決を

2018年12月6日

東名高速での夫婦死亡事件

 あおり運転が話題になっている。きっかけとなったのは、今月3日に横浜地裁で開かれた死亡事件の裁判である。この事件は昨年6月、神奈川県大井町の東名高速道路で発生した。家族4人が乗っていたワゴン車が、猛スピードで追ってきたクルマにあおり運転を繰り返された揚げ句に進路をふさがれて停車。その後、後続のトラックが追突し、ワゴン車の夫婦が死亡したものである。

 あおり運転をしていたのは石橋和歩被告。石橋被告は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪で横浜地検に起訴された。3日の初公判で石橋被告の弁護人は、停車中の事故であり危険運転にはならないと無罪を主張している。

 あおり運転は昔から存在した。マナーの悪い一部のドライバーが車間距離を詰めて後ろから追ってきたり、道路をジグザグに運転して進路を妨害したりする行為がたまに見られていた。さすがに東名の死亡事故ほど悲惨な例はなく、それほど話題になることが少なかったようだ。

 だが、最近は違ってきている。あおり運転は重大な違反行為として警察も取り締まりを強化している。場合によっては一発で免停処分である。

 私もクルマを運転することが多い。幸い、これまであおり運転に出くわしたことはないが、これから先も絶対に遭わないとは言い切れない。そのため、自己防衛策として愛車にはドライブレコーダーを搭載している。こちらがいくら注意して運転しても、相手ドライバーの不注意やあおり運転でとばっちりを受ける可能性があるからだ。そういった場合、相手の「知らぬ存ぜぬ」を防ぐ証拠保全の意味でもドライブレコーダーは必需である。

 ただ、これだけで安心するのは禁物。「あのドライバー、ちょっと危ないな」と感じたら、やり過ごすか、さっさと逃げるに限る。君子危うきに近寄らずではないが、危ない相手には近づかないほうが賢明のようだ。

 さて、横浜地裁の裁判である。法律の解釈に従えば、停車中のクルマに危険運転致死傷罪は適用されない可能性が高い。だが、高速道路でクルマを停止させることがどれだけ危険かくらい常識的な人間なら判断はできる。この裁判は必ずしも法律が世間の常識を反映していない例なのかもしれない。

 この裁判は裁判員裁判で審理が進められ、裁判官の助言のもとに6人の裁判員が最終的な判断を下す。裁判員たちは「法か正義か」を問われることになるが、法律の形式論や解釈論だけで終わらせてほしくはない。社会からあおり運転がなくなり、ドライブレコーダーが無用の長物になるような判断を示してほしいのだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)