大阪ヒト元気録

薬物から若者を守れ

府立西野田工科高校定時制課程生徒指導係薬物対策担当教員
千地 雅行さん
2013年5月15日

啓発活動に奔走 後進育成にも力

手づくりのチラシなどを使い薬物乱用防止教育に取り組む千地さん

 近年、若者を中心に脱法ハーブをはじめとした薬物のまん延が社会問題化している。そんな中、府立西野田工科高校定時制課程で、生徒指導係薬物対策担当教員として、生徒らに手作りの啓発チラシを配布するなどして、薬物対策の啓発に当たるのが千地雅行さん(55)だ。

 千地さんは、府内の定時制高校に勤務する中、生活指導担当として、生徒らの飲酒や喫煙防止に当たってきた。非行や、飲酒、喫煙防止の延長線上として、薬物対策の活動を始めたのが、きっかけだった。7年前から同校に赴任し、取り組みを継続する一方、現在では日本薬物対策協会大阪支部の支部長も務めている。

■気付けば依存

 千地さんは近年の若者の薬物への認識について「いつでもやめられる、共存できると考えている若者たちもかなり多いと感じる」と指摘する。その上で「共存していると思った時には既に依存している」と、薬物乱用防止教育の必要性を訴える。もぐさを使って脱法ハーブの模造品を作り、生徒らに手触りなどを体験してもらうほか、啓発チラシを作成するなどしてきた。

 そんな中、昨年1月には同校近くに脱法ハーブ専門店が開店。危機感を抱いた千地さんは早速、啓発用の校内放送用の原稿を書き上げる。ドラッグを服用することで最悪のケースでは死に至ることや、脳神経が破壊され、一生、廃人になるケースもあることを訴え、最後に「誘われても、絶対に手を出さないこと」と呼び掛けた。店は、約半年後には閉店した。

■意識に変化も

 最近では、生徒から薬物の相談を受けることが増えたという千地さん。「薬物の脅威についての認識の改めが進み、意識の変化もわずかながら見受けられる」と実感している。

 大阪府では昨年10月、脱法ハーブの使用などに罰則を設けた全国初の条例を制定。今年3月には薬事法でハーブ系の「脱法ドラッグ」に使用される化学物質の規制対象を大幅拡大した「包括指定」がスタートした。それでも千地さんは薬物乱用防止の取り組みについては、啓発が進みにくい点も指摘。「あの手この手で薬物への誘惑はなくならない」と苦い思いも感じている。

 千地さんは「活動を通じて、賛同してくれる仲間を集め、啓発に当たってくれる後進の育成」を今後の展開に見据える。

 ○…日々、生徒らと接する中で、「声掛け」と「観察」の継続に力を入れているという千地さん。あいさつが雑談になり、雑談が会話になる。そして会話が対話に至る中で、「信頼」というものが育まれるという。決して派手な取り組みではないが、教育現場の最前線で生徒らと向き合う千地さんの真摯(しんし)な姿勢を、目の当たりにした。

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