居場所をつくろう 共生の現場から

(3)第1部 ホームレス(下) 「日本再生」に通じる道

2017年1月5日

働く場、支援拠点拡充を

「気持ちよく働ける場を用意していかなければならない」と訴える山田理事長=昨年12月31日、大阪市西成区

 ホームレス自立支援に今後必要な施策は何か。関係者らは、働く場の確保や空き家を活用した支援拠点づくりを提案している。その先に見いだしているのは「誰もが活躍できる社会づくり」や「地域活性化」。国レベルの課題解決を見据え、展望を示している。

■仕組みづくり□

 「新しい働き方の仕組みづくりに挑戦していくべきだ」。NPO法人釜ケ崎支援機構(大阪市西成区)の山田実理事長は力を込める。日雇い労働者や生活保護受給者が集まる大阪・釜ケ崎で1970年代から活動し、体得した理念だ。

 グローバル社会の中、企業は利潤追求型の経営にかなう労働者を重視。雇用は先細りし、困窮者はより困窮化していくとみる。そこで必要と考えているのが働く場の確保だ。

 これまでの利益優先の営みによって世界各地で自然破壊が発生。そこに雇用を生み出す余地があるという。

 耕作放棄地への対策や森林保全など自然環境の維持は営利目的では事業化しにくいが、対策を打ち出さなければ事態は悪化する。山田理事長は「公的機関や企業が地球規模の課題として手掛けていくべきだ」と説く。

 自身はこれまで、高齢日雇い労働者が清掃といった作業で収入を得られるようにする自治体事業の創出に尽力。NPO法人として、自転車修理や園芸の技術習得の機会を設けてきた。

 山田理事長が労働にこだわる理由はこうだ。「人にとって働くことは生きがいであり、誇り」。今後、働く仕組みを保障する社会づくりに向けて尽力していく構えだ。

■跳ねるベッド□

 1990年代からホームレス問題に関わってきた大阪市立大の水内俊雄教授は「跳ねるベッド」を効果的に組み込む意義を説く。

 生活保護で穏やかな生活を保証する「跳ねない安楽なベッド」だけでなく、社会で生きていくための力を再び蓄え、多様な働く機会を創出する。たとえ戻ってきても再度挑戦できるように受け止める機能を持つベッドだ。

 不可欠なのは「空間的な支援拠点」。ホームレス支援では、相談業務をはじめ、一時的な宿泊所を設けて生活習慣を整えたり、就労につなげたりする多機能型サービス拠点が成果を上げてきた。

 こうした場の集積が困窮層の「安全網」となっており、「ホームレス生活者を含む困窮層を対象に、各地で機能させていくべきだ」と水内教授。注目しているのが空き家をはじめとする“遊休資源”の利活用だ。

 東京一極集中が続く中、遊休資源は全国で問題化。地方の過疎地域とも共通する。この資源を活用して人を集め、活性化させるため、「跳ねる−」の考え方を提案。「地域再生にもつながる効果的な困窮層支援の仕組みづくりに挑戦を」と呼び掛ける。

 ホームレス生活者の自立を図ってきた取り組みはいま、さまざまな人が共に生きていくための手がかりとして、日本の未来を照らし出している。

ミニクリップ
 ホームレス支援の費用対効果 ホームレス支援全国ネットワークが、ホームレス自立支援センターの費用対効果を推計したところ、年間事業費約9200万円で運営した政令指定都市の2013年度実績で「純利益」に当たるのは約4千万円。利用者の就労による税と社会保険料の徴収増を「直接的な効果」と設定し、利用者が仮にセンターで支援を受けず、生活保護のみで生計を賄った場合にかかる費用を「潜在的な効果」として加え、計算した。