居場所をつくろう 共生の現場から

第2部 LGBT 企業の取り組み

2017年3月22日

言えぬ苦しみから解放

LGBTの「アライ」であることを示すステッカー=野村ホールディングスのオフィス

 「言えずに苦しんでいる人は多いと思う。そっとしておいてという人もいるが、カミングアウトしやすい雰囲気づくりが必要だ」

 LGBTが働きやすい職場づくりを目指すNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市北区)の橋本竜二さん(27)はこう語る。以前の会社でゲイであることをカミングアウトできなかった橋本さんは、上司や先輩にうそをついている感覚に苦しんできた。

■進まぬ理解

 当事者が働きやすい職場づくりに欠かせないものとして、橋本さんは「(LGBTが)異質な存在ではないという認識が大切」と話す。当事者と触れ合う機会やLGBTに関して学ぶ研修が大切で、「身近に触れ合ったときに初めて、『この言葉は相手が傷つくかもしれない』と考えるようになる」。LGBTへの“気付き”が行動に変化をもたらすという。

 LGBTを巡る企業の取り組みを、橋本さんは“前進”と捉える一方、「女性や障害者などを対象にした環境整備が主流になっている。『LGBTに取り組むのは、まだ早い』という企業の声を聞く」と説明。「大手企業の人事部などでは理解が進んできていると感じるが、現場レベルでは浸透し切っていない」と語る。

■「アライ」

 野村ホールディングス(東京都中央区)は、職場に「アライ」を増やす取り組みを展開している。アライはLGBTをはじめとする性的少数者を理解し、行動する支援者を指す。カミングアウトができない当事者は、孤独や不安に陥る恐れがある。職場にアライがいると分かればストレス軽減などが期待できるという。

 取り組みの一環として「私はアライ」と英語で書かれたステッカーを作製し、配布。2年前に別の企業から野村証券に転職した30代の男性社員は、以前の勤め先でゲイだとカミングアウトできなかった。しかし同社の施策や、アライの存在によってカミングアウトができたという。

■「行動」へ

 LGBTに関する取り組みは2008年に、リーマン・ブラザーズの人員を承継した際、社員の持つ多様性を学ぶ社員ネットワークなどを引き継いだことが始まりだという。

 新卒学生の面接担当者のガイダンスにLGBTへの差別禁止を組み込んでいるほか、LGBTの社員を対象にした支援制度としてパートナーの性別にかかわらず慶弔休暇や介護休暇を4月から取得できるようにした。アライがさらに増えるよう取り組み、カミングアウトしやすい職場を実現することで制度利用につなげたい考えだ。

 同社人材開発部の東由紀さんは「『知る』段階から支援のための『行動』に向けた研修を推進したい」。LGBTへの理解が全国の職場で進むために「企業の担当者が理解を深め、行動に移すことが大切だ」と語る。

   ◇   ◇

 LGBTを巡る動きに注目が集まる中、企業、行政、学校現場での取り組み、当事者の思いを4回にわたり紹介する。

ミニクリップ
 LGBT レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字。日本では人口の5〜8%程度と言われている。カミングアウトできない人も多く、見えにくいマイノリティーとされる。