居場所をつくろう 共生の現場から

第2部 LGBT 教育の取り組み

2017年3月24日

子ども救う小さな啓発

日高教授らによる教員意識調査をまとめた冊子(手前)のほか、淀川、阿倍野、都島区が共同で制作した当事者が学校生活を振り返った冊子「性はグラデーション」(中央)など、学校現場での啓発に活用されている

 王子様はお姫様を助けて、結婚しました−。

 「なんで?」。読んでもらった絵本に違和感を持ったのは幼稚園の頃だ。府内の公立小学校教諭の小池けい子さん(仮名・30歳)は、幼き日の記憶をたぐり寄せる。性別は女性、恋愛対象は女性だ。「その頃から女同士ってありやん、って思っていました」。一つに束ねた黒髪、白いコートがよく似合う。

■相談できない

 「小さなうそを重ねることがしんどかった。人と付き合う度に心に壁を作ってしまう」。小さな違和感は、時とともに小池さんの心に重くのしかかった。

 教科書には「思春期になると、誰でも異性への関心が芽生える」とあり、友人が明かす好きな人は、いつも男性だった。

 「周りに言えない。相談できない。普通に会話もできない」。教師になったのは、学生時代の経験が根底にあったからだ。

■クラスに2人

 文部科学省は2015年に性的少数者(LGBT)の児童生徒に配慮するよう通知を出すなど、学校現場では理解しようとする動きが広がっている。

 小池さんは当事者として、5年前から教員向け研修会に参加しているが、「実践するのは難しい」と明かす。

 以前、授業でLGBTを取り上げたいと上司に相談すると、難色を示された。「学習指導要領にないし、他の先生も反対する。それに、うちの学校には(LGBTの児童は)いないよ」と。

 宝塚大看護学部の日高庸晴教授(社会疫学)が、厚労省エイズ対策研究事業の一環で2011〜13年に約6千人の教員に実施した調査で、「LGBTを授業で取り上げない理由」に、4割が「教える必要性を感じる機会がなかった」と答えた。

 「機会がなかったのではなく、その認識がない」と日高教授。海外の研究ではLGBTは人口の3〜5%、クラスで1〜2人はいる統計だ。また、ゲイ、バイセクシュアルの男性の自殺未遂リスクは異性愛の男性の5・98倍(05年厚労省エイズ対策研究事業)であり、LGBTの58%が学校生活でいじめ、21%が不登校を経験していた(16年ライフネット生命委託調査)。

 日高教授は「先生に現状の数字を知ってもらい、正しい認識、知識を持ってもらう。まずは、先生たちの学ぶ環境づくりからスタートしなければならない」と指摘する。

■プラスの発信

 今、小池さんが心掛けているのは、児童に“気付き”を与えること。授業の合間や休み時間、児童の会話にも耳を澄ます。「ゲイは気持ち悪い」と笑う児童には、「先生には、たくさんのゲイの友達がいるよ」と話す。

 思い出すのは、中学時代の担任教諭の言葉だ。「相手が男性でも女性でも、好きな人がいるのは素晴らしいことじゃない」。何も言えなかったが、うれしかった。救われたと思った。だからこそ願う。

 「先生たちは、同性を好きになる気持ちを否定せず、プラスの意見として発信してほしい。日ごろの小さな啓発が子どもの心を救うから」

ミニクリップ
 文部科学省とLGBT 2014年に実態調査を行い、性同一性障害に関係する教育相談が606件あったと報告。15年に性同一性障害、同性愛を含む性的少数者(LGBT)の児童生徒に配慮を求める通知を出し、昨年4月には具体的な対応や支援を記した教職員向け冊子を制作した。17年度から使用される高校家庭科の一部の教科書で「LGBT」が取り上げられた。