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第4部 外国人(中) 苦戦する留学生就職

2017年7月20日

効果的支援 在り方は

講演する中野社長に質問を投げかける留学生=7月、吹田市の関西大

 訪日外国人観光客が急増する大阪。観光客への対応や海外進出を視野に企業が外国人留学生へ熱い視線を送っている。一方、日本で働く意思があっても内定に至らなかったり、就職しても数年内に離職するミスマッチもある。より効果的な支援の在り方が問われている。

■フィットするか

 「変化をチャンスに変える一歩を」。今月上旬、吹田市の関西大で行われた講義「ビジネス日本語」で、講師の中野智哉氏がそう力説した。中野氏は新卒採用支援を手掛けるアイプラグ(大阪市淀川区)の社長。この日は、人工知能の台頭を念頭に「10年後の仕事」について講義し、受講していた留学生が次々と手を挙げた。

 講義は、関大や大阪大など国公私立大4校や自治体、企業などでつくる「ケアーズ大阪」の公開講座として実施。15年度に立ち上げ、留学生が大阪・関西で就職、定住するための支援に取り組んでいる。

 「よろず相談に応じ、問題を未然に抑止することが大切だ」。ケアーズの担当教員で関大国際部教授の池田佳子氏が支援に必要な仕組みを指摘する。

 雇用のミスマッチや離職リスクを抑えるため、ケアーズでは“サクセス大阪”と題したプログラムを進めている。学内向けには語学力養成はもちろん、異文化理解のための研修やワークショップを通じた内定・就職後のケアを実施。留学生の雇用経験が浅い企業に対しても、勉強会を通じてフォローする。参加学生の就職率を20年度には90%にすることを目指しており、池田教授は「企業側の視点も重要で、文化の違いを丁寧に説明することが必要」と説く。

 大阪商工会議所は本年度、観光消費拡大や生命科学の分野での産業創出などを目指す計画「たんと繁盛大阪アクション」に留学生の活用と職場環境整備を盛り込んだ。企業と留学生のマッチングにも積極的。「育成や採用手順が分からない」という企業も多いことから、担当者は「ケアーズとも連携し、交流会を通じて留学生の人となりを分かってほしい」と話す。

■敬語や所作

 留学生が日本の企業風土になじめるよう、語学学校とNPOが連携してインターンシップ(就業体験)に取り組む事例もある。

 ECC国際外語専門学校(大阪市北区)とインターン事業を手掛けるNPO法人ジャイー(同区)は、昨年から「日本ビジネス専攻」で学ぶ学生を対象に半年間のカリキュラムをスタートさせた。

 16年度は17人が参加し、敬語や所作などのビジネスマナーを習得。ベトナム出身のレ・ティ・リエンさん(24)は「時間や上下関係の厳しさ、“報・連・相”の大切さを知った」としみじみ話す。

 学校は2年制で、就職活動では既にエントリーシートの提出や面接に悪戦苦闘している。観光業界に内定したタイ系米国人のバークスワン・アウディ・シュウポングさん(33)は、面接の所作にも研究を重ねた。「日本の文化も大事だが、自国の文化も大事」と葛藤を振り返った。

 ジャイーの沢田万寿江さんは「意欲や伸びしろは書面や面接ではなかなか分からない。このプログラムを就職に結び付けられるものにしたい」と展望する。

ミニクリップ
 外国人留学生 政府は、グローバル戦略の一環として、東京五輪が開かれる2020年までに国内で学ぶ外国人留学生を30万人とするとしている。日本学生支援機構の調査では、15年に20万人に達した。そのうちの6割が日本国内での就職を希望しているものの、就職率は全体の3割程度にとどまっている。大阪では訪日外国人観光客(インバウンド)が年間900万人を突破。中小・中堅企業もインバウンド対応や海外進出を視野に入れ、留学生の採用需要が高まっている。