記者が選ぶ なにわこの1年

 2017年もさまざまな出来事が大阪を駆け巡った。政治から経済、スポーツに至るまで各界で印象に残ったニュースが数多くある。それぞれの話題を追った担当記者が、改めてニュースと共にこの1年を振り返る。

(4)教育無償化

2017年12月24日
無償化の導入方針で注目が集まった幼児教育(写真は本文の内容と関係ありません)

 教育無償化を巡る問題に光が当たった。幼児教育については、大阪市や守口市で無償化が進む中、安倍晋三首相が衆院選で訴えて争点化され、一気に注目度が高まった。歓迎する声がある一方で、保育所の整備を先に徹底すべきといった指摘もあり、施策の優先順位が問われた。

 大阪市は2016年度から「全ての子どもたちが質の高い教育を受けられる環境づくり」の一環で、政令市では全国で初めて幼児教育の無償化を段階的に導入。17年度は4、5歳児の4万人強が対象で、予算額は約55億円に上った。

■効果分からない

 幼児期の教育を意識するきっかけになったとの意見や、無償化分は生活費に消えただけとの声があり、「すぐに何らかの効果が出ているかは分からない」(市担当者)との現状も浮かび上がった。

 守口市は17年度から幼児教育・保育の無償化を実施している。0〜5歳児約4200人を対象に、公立保育所の民営化などで生まれた6億7500万円を充てた。

 保育所や認定こども園の利用申込数は前年度比4割増。保護者の就労意欲を刺激し、転入による人口増に結び付いたケースがあった半面、保育所の待機児童が改めて課題となった。

■変化を歓迎

 一方、府では私立高校授業料の保護者負担軽減策を、11年度から独自に展開してきた。世帯年収に応じて無償化から応分負担まである。3年生の保護者を対象にした16年度のアンケートでは、支援対象者のうち「制度があったから私立に修学できた」割合は8割を超えた。

 公立中学の校長からは「私立の進学実績が伸びたり、公立が特色を積極的にPRしたりと、制度のおかげで良い変化があった」と評価する声が上がっている。

 授業料支援策が、子どもに新たな進路選択の道を示し、学校の切磋琢磨(せっさたくま)を促した点で一定の成果が見られる。大阪の先駆的な取り組みが、国レベルで実施しようとする施策の利点と課題を、先に浮き彫りにしている。

的確な制度設計を
 ○…財源が限られる中、教育無償化は、費用対効果を十分に踏まえて優先順位を付けるべきだ。全ての子どもを対象に成長を促すのが目的なら、いま幼児教育の無償化を行うと、充実した教育を受けた幼児と、通園しなかった幼児が小学1年で混在する。
 受けた教育内容の差が大きいほど、どちらの子どもにとってもマイナス面は大きい。保育所といった受け皿の確保も不可欠だが、そこでの教育内容についても十分な整備が必要だ。
 教育環境の充実だけ見れば、小学校の少人数化を優先した方がより効果的な可能性もあるのではないか。少子高齢化の中、1人でも多くの子どもたちが、よりよい未来をつかめる的確な制度設計が必要だ。